2015.04.14更新

Q.昨年暮れに父が亡くなりました。母は10年前に亡くなっていますので相続人は姉妹三人です。私は次女で三女とともに既に嫁いでいます。長女は独身で父と一緒に暮らしていました。四十九日が終わり、そろそろ遺産分割協議を始めようと父の遺産を調べたところ、姉が、父の預金を全て引き出してしまっていました。そればかりか、父と一緒に暮らしていた父名義の土地建物を不動産業者に売却してしまっていました。私と三女はどうすればよいでしょうか。

 

A.まず前提として、姉が預金を引き出し、土地建物を売却した時期が問題となります。


(1)父が亡くなる前
 姉が預金を引き出し、土地建物を売却したことについて父の承諾を得ていたかどうかが問題となります。
 いずれも父の承諾を得ていた場合には、姉の行為に何ら問題はありませんので、あとは引き出した預金や土地建物の売却代金がどこに行ってしまったのかが問題となります。
 父のために使われたのか、父が姉に贈与したのか、姉が父に無断で個人的に使ってしまったのか、姉が隠しているのか等、具体的事情によって対応が変わってきます。

 

 1)父のために使われたものなら父の意思には反しないでしょうから、残った遺産の所在を確認し、姉妹で分割の協議をすればよいでしょう。
 

 2)父が姉に生前贈与したものなら、あなたと三女は生前贈与によって遺留分を侵害された可能性がありますので、1年以内に姉に対して遺留分減殺請求をして、侵害された権利の回復を求めていくことになります。
 

 3)姉が無断でお金を使い込んでしまっていた場合は、不法行為ですから父は姉に対し損害賠償を求めることができますので、その権利を相続によってあなたと三女が相続し、各自の権利として姉に対して損害賠償を求めていくことになります。
 姉が父に無断で預金を引き出し、土地建物を売却した場合も、父の姉に対する損害賠償請求権を相続し、姉に対して損害賠償を求めていくことになります。

 

(2)父が亡くなった後
 父が亡くなった後は、遺産分割協議が終わるまで預金は凍結されますので、姉が預金を引き出したということは、預金が凍結される前に父の印鑑や通帳あるいはカードを使って預金を引き出したか、姉妹の印鑑を偽造して引き出したかのいずれかです。
 土地建物についても、亡くなった後は、相続人の実印や印鑑証明書を偽造したり、悪用したりしない限り売却することはできませんので、何らかの不正な方法で売却がされた可能性があります。

 

 1)まず、預金ですが、銀行に対しては、本来払い出しができないはずの預金を払い出したということで、銀行側に何らかの落ち度があれば、銀行に対して引き出された預金の返還を要求することが考えられます。

 しかし、通常は銀行も必要な手続を経て預金の払い出しに応じているでしょうから預金の払い出しの無効を主張していくことはかなり大変です。

 姉に対しては、他の相続人の承諾も得ずに預金に払い戻しをしていますので、相続分侵害の不法行為あるいは不当利得を理由に相続分に応じた預金の返還を要求していくことが可能です。もちろん姉のしている行為は犯罪です。

 

 2)次に土地建物ですが、仮に不正な手段で土地建物の名義が変えられていたとしても、そのような名義変更の登記は無効ですので、あなたと三女は、買受人に対して相続分に応じた持分の名義変更を要求することが可能です。この場合、買受人とあなたと三女の三人の共有関係が復活することになります。

 買受人としては騙されたようなものですから購入契約を解除して元どおり姉妹の共有関係に戻すと言い出す可能性もありますが、仮に共有関係が続くようなら買受人との間で分割協議をしなければならなくなります。

 いずれにしても姉の不法行為によって起こったことですから、姉に対しては発生した損害の賠償を求めていくことが可能です。

 

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あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
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