2015.06.25更新

Q.公立中学校に通う1年の男子生徒の母親です。息子はこの4月から柔道部に入部しました。息子は体も同級生に比べて小柄で、柔道も初心者です。受け身も十分にマスターできていません。1週間ほど前、放課後に部活の練習をしていて、3年生の先輩から乱取りをされ、投げ飛ばされた拍子に頭と腕を打って、腕を骨折し、脳震盪を起こしました。
 幸い救急車が直ぐに来てくれて病院で検査をしましたが、今のところ異常はなく、しばらく定期的に通院をして様子をみることになりました。
 事故が起こったときに部活の顧問はおらず、生徒のみで練習をしていました。今後、息子にかかった治療費や障害が残ったときの責任は誰にとってもらえばよいのでしょうか。

 

A.市区町村または都道府県に対して国家賠償請求が可能!

 

 公立中学校のクラブ活動中の事故で、経験や技量に大きな差のある生徒間で柔道の乱取りが行われ、その場に顧問の担当教諭が立ち会っていなかったということですから、担当教諭の指導監督上の過失を理由に、学校設置者である市区町村、あるいは給与支払者である都道府県に対して、国家賠償法1条に基づく損害賠償請求をしていくことになるでしょう。また、乱取りをした3年生の児童生徒に対しても、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。

 

担当教諭には事故防止に対する重い責任がある!

 

 今回は、学校の教育活動の一環として行われるクラブ活動において発生した事故です。クラブ活動も教育活動の一環として主に学校の施設を利用して実施されるものですから、学校の管理下にあるといえます。

 

 特に、柔道のような激しい取組みが行われる危険なスポーツにおいては、毎年かなりの数の死傷事故が起こっており、クラブ活動を指導監督する顧問の教諭にも、事故の発生を未然に防止するために、児童生徒の発達段階と技量に応じた適切な指導監督が求められます。

 

 質問者のご子息は、未だ中学1年生で体格も小柄、また、クラブ活動を始めたばかりで、未だ十分な受け身もマスターできていないというのですから、そのご子息を相手に、体格も、経験も技量も違う先輩が乱取りをするというのは、かなり慎重でなければなりません。担当教諭としても、児童生徒の安全に配慮した指導監督を尽くすべきケースと言えます。

 

 確かに、クラブ活動は、学校の授業そのものとは違って、生徒の自主的な活動が尊重される場面ではありますが、それでも柔道の練習中の事故発生の危険性を考えると、中学生の児童生徒だけで乱取りの練習をさせた担当教諭は、過失を免れません。

 

 担当教諭の過失は、学校教育の職務遂行上のものですから、国家賠償法1条の公権力の行使にあたり、担当教諭が所属する学校の設置者である市区町村、さらには、教諭の給与を支給する都道府県もまた、国家賠償法1条に基づく責任を負うことになります。

 ただし、担当教諭は公務員ですから、担当教諭個人に対して不法行為責任を追及することはできません。

 

指導した先輩児童やその両親にも責任が発生することも!

 

 また、乱取りをした先輩の児童は、体格も技量も違う後輩に対し、激しい乱取りをした点で過失がありますので、民法709条に基づく損害賠償責任を免れません。

 先輩の児童の両親に対しては、当該児童が日頃から危険な指導をして、過去にも他人に怪我をさせたことがあるなど、事故発生を予見できる具体的事情があれば、その両親に対しても、民法709条に基づき監督責任を追及する余地があります。

 

 請求できる損害は、治療費、交通費、学校や病院への送り迎えに要した費用、入通院の慰謝料、後遺障害が残った場合の慰謝料、障害で失われた能力に応じた将来の逸失利益などになります。

 

 なお、本件は、学校管理下の事故ですから、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度により、所定の治療費と後遺障害に伴う損害(障害見舞金)の支給を受けられると思います。

 

⇒弁護士好川久治のその他の問題に関する情報はこち

 

⇒港区虎ノ門の弁護士好川久治への相談・問い合わせはこちら

 

ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
弁護士好川久治
℡03-3501-8822|9:30~18:00
東京都港区虎ノ門1丁目4番5号 文芸ビル8階

メールでのお問い合わせはこちらから tel:03-3501-8822
初回相談30分無料 tel:03-3501-8822
弁護士好川のシェアしたくなる話
Q&A
実際の解決事例
あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
あんしん相続相談ガイドに掲載されました。