2015.07.06更新

新幹線の車内で焼身自殺!

 

 先日、東海道新幹線の車内で71歳の男性が焼身自殺をした事件が報道されていました。電車内でガソリンらしき油を体に浴びて火をつけるという前代未聞の事件に、日常生活のなにげない場所に人々の安全を脅かす危険が潜んでいることを改めて実感させられました。


 この事件で、容疑者の男性が死亡したほか、乗客の女性1人が煙にまかれて死亡、その他30名近くの乗客が重軽傷を負ったようです。東海道線は多数の列車が運休し、多数の乗客に影響を与えたようです。警察は現住建造物等放火と殺人の容疑で捜査をしていますが、容疑者は既に死亡していますので、いずれ容疑者死亡のまま送検され、不起訴になる見込みです。

 

JR東海に多大な損害が発生


 JR東海は、けが人の救助や列車運行の安全性の確保、警察の捜査への協力等のために列車の運行を停止せざるをえません。そのため、乗客への影響は避けられず、代替交通機関の手配による損害(振替輸送費)、事故の対応にあたる社員の人件費(超過勤務・休日出勤に係る各種手当・宿泊代など)、乗車券や特急券の払戻し・キャンセル料、怪我をした乗客への見舞金、焼損した車両、関連機器の修理費など広範囲で多額の損害を被ったと推測されます。

 

 JR東海は、列車の安全な運行について最大限の配慮を求められますが、利用客が1日あたり数十万人という現実のもと、飛行機のように全ての乗降客のセキュリティチェックを実施することは現実的ではないでしょう。そうすると、今回の事件をめぐって、、JR東海が乗客に対する安全配慮義務違反の責任を問われることは考えにくいです。

 

泣き寝入りになることも!

 

 では、JR東海は、いったい誰に損害の補償を求めていけばよいのでしょうか。

 

 まず思いつくのは容疑者の遺族です。遺族は相続により容疑者の権利義務を承継しますので、遺族が相続を承認すれば遺族に対して損賠賠償を請求していくことが可能です。しかし、普通に考えれば、多額の賠償義務を背負いきれない遺族は相続を放棄することになるでしょう。

 

 仮に容疑者が精神疾患で事件に対する責任能力がない状況であった場合は、容疑者を法的に監督すべき責任がある者(身内、施設の責任者など)が固有に責任を負うことがあります。しかし、この場合も、億を超えると予想されるJR東海の損害を賠償できるだけの能力があるとは思えません。


 JR東海にしてみれば踏んだり蹴ったりですが、今回の事件を教訓に、事件の発生の経緯と発生後の対処方法について綿密な検証をしたうえで、今後の同種犯罪の防止のためにどのようなことができるのかを考えて、損害の発生ないし拡大のリスクを最小限に抑えるための対策を考えていくしかないでしょう。

 

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あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
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