2015.09.27更新

3年越しの裁判が終わった!


 先日、3年越しで争っていた裁判が終わりました。3年というと、どんな大事件かと思われるかもしれませんが、実はよくある貸金の返還を求める裁判でした。

 

 貸金の裁判というと、普通は借用書があって、返済しなければならない金額にも争いがなく、裁判では、どうやって支払っていくか、という和解の話しだけが進んでいくことが多い事件です。

 

 しかし、この事件はそうではありませんでした。

 

 借用書はなく、あるのはノートにメモ程度に書いた金額と日付、借りた本人の署名があるだけでした。貸した時期も10年以上前で、貸した回数は10回以上、しかも本人は既に他界。裁判は、相続人を相手に貸金の返還を求めるものでした。

 

裁判では証拠が全て

 

 本人が生きていれば、金額の横に自分の署名があるノートを出されれば、それが借りたお金なのか、もらったものなのか、本当にお金を受け取っているのか、そうでないのか、などを争うことはそれほど多くないです。しかし、本人が亡くなっていると、裁判の相手は事情を全く知らない相続人ですから、貸した当時の証拠のみが手がかりとなります。

 

 貸主としては、相続人から、「借りたかどうかわからない」、「借用書がないのはおかしい」、「本人は援助を受けていた可能性もある」と反論されれば、「そうでない」ということを一つ一つ証明していかなければなりません。

 

 ノートだけでは心細いので、当時の通帳や税務申告資料などを手がかりに収入と資産状況を精査し、10回以上に及ぶ貸したお金の一つ一つについて、お金の流れを逐一証明し、これを相手が受け取ったことを相手の通帳の証拠提出を求めて、証明していきます。

 

 相手の通帳は当然には訴訟には提出されませんので、銀行に対して裁判所から提出を命じてもらいます。銀行も簡単には応じませんので、裁判所から通帳履歴の提出命令を出してもらい、記録を出してもらいます。それでも、通帳の保管期間の関係で全てが提出されるとは限りません。

 

リスク管理が大切

 

 このような一見簡単そうにみえる裁判も、悪条件が重なると長期戦となります。どんなに親しい間柄でも、借用書と領収書はきちんと用意してお金を貸すべきだと痛感させられました。

 

 結果は、ほぼ満額の返還を受けられる内容で和解が成立しましたが、結論に至る3年間は、依頼者にとっても、非常にストレスの連続だったと思います。

 

 今回の件に限らず、どのような場合でも万が一に備えて、争いとなれば何が起こるのか、その場合に何が必要となるのかを考えて行動する習慣をもつことが大切です。


 争われる余地を残さなければ紛争にもなりませんので、予防の意味でも心がけておきたいものです。

 

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投稿者: 弁護士好川久治

2015.07.21更新

女性雑誌の取材を受けた 

 

 先日、女性雑誌の取材で、「ハラスメントと闘う女性たち」について話を聴かれました。武井咲主演のドラマ「エイジハラスメント」が始まったことや、最近女性に対するマタニティハラスメント(妊娠・出産、育児休業等を理由とする解雇、不利益な異動、減給、降格などの不利益な取扱い)が問題視されていることなどが背景にあると見られます。

 

30以上の「ハラスメント」があるなんて!

  

 「ハラスメント」は、人間と人間の人格のぶつかり合いのなかで起こる人権侵害行為です。夫婦間や交際する男女間でのDVや、友人同士・同僚間での嫌がらせ・いじめをはじめ、職場、医療現場、大学、地域社会などで力関係を背景として、強い立場の者が弱い立場の者に対して度を越した嫌がらせを行うことを総称したものです。

 

 取材のなかで、30以上のハラスメントがあると聞いて驚きました。

 言葉が一人歩きして何でもかんでも「ハラスメント」だとして問題にするのもどうかと思いますが、言葉が生まれることで、ハラスメントの存在を身近に感じ、世間の認知も広まることで、改めてハラスメントの問題点と被害者救済、再発防止などを考える機会になれば、ハラスメントで苦しんでいる人たちの人権救済につながると思います。

 

 2014年の統計で、過労や職場でのハラスメントでうつ病などの精神疾患に罹患し、労災認定された人が497名に上ったそうです。これは前年対比で約14%増です。実際に被害事例が増えているのかもしれませんが、最近急速に「ハラスメント」という言葉が広まったことで、被害が認知されやすくなり、被害者も自ら名乗り出やすくなった、という側面もあると思います。

 

ハラスメントは早期解決が大切

 

  ハラスメントは、被害が発生すると早期解決が大切です。放置すると加害者による行動がエスカレートする可能性がありますし、何よりも被害を受けている人が精神的に疲労困憊し、改善や救済に向けた動きをとれなくなることが問題です。
 もちろん、被害者の救済のためにはハラスメントに理解を示す協力者の存在が重要です。友人や家族、会社の通報窓口、労働組合、労働局、弁護士会などの相談機関を利用することも躊躇するべきではありません。

 

 職場の理解がない、組織が被害救済に消極的、再発防止が徹底しないような場合には、退職をも念頭に、法的措置をとらざるをえないこともあるでしょう。しかし、その前に、まずは手を尽くして組織に対し、被害救済とハラスメントの原因の除去、関係者の処分や異動、再発防止の徹底などを求めていくのが先でしょう。

 

ハラスメントはリスクマネジメントの問題でもある

 

 ハラスメントは、被害が発生する度に問題を解決していくだけでは抜本的な予防策にはなりません。ハラスメントが起こりやすい職場環境を是正していかなければ、第二、第三の被害が発生してしまいます。ハラスメントが組織全体の問題であることを再確認したうえ、組織の取り組みの改善、ハラスメントを許さないという組織の強い意識と行動、人権教育、ハラスメントの早期発見と被害救済、関係者の処分、再発防止策の策定と再教育など、全体的な対策が必要です。
 ハラスメントの問題が、人権侵害の問題であるとともに、組織におけるマネジメントの問題であると言われるゆえんです。

 

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2015.07.06更新

新幹線の車内で焼身自殺!

 

 先日、東海道新幹線の車内で71歳の男性が焼身自殺をした事件が報道されていました。電車内でガソリンらしき油を体に浴びて火をつけるという前代未聞の事件に、日常生活のなにげない場所に人々の安全を脅かす危険が潜んでいることを改めて実感させられました。


 この事件で、容疑者の男性が死亡したほか、乗客の女性1人が煙にまかれて死亡、その他30名近くの乗客が重軽傷を負ったようです。東海道線は多数の列車が運休し、多数の乗客に影響を与えたようです。警察は現住建造物等放火と殺人の容疑で捜査をしていますが、容疑者は既に死亡していますので、いずれ容疑者死亡のまま送検され、不起訴になる見込みです。

 

JR東海に多大な損害が発生


 JR東海は、けが人の救助や列車運行の安全性の確保、警察の捜査への協力等のために列車の運行を停止せざるをえません。そのため、乗客への影響は避けられず、代替交通機関の手配による損害(振替輸送費)、事故の対応にあたる社員の人件費(超過勤務・休日出勤に係る各種手当・宿泊代など)、乗車券や特急券の払戻し・キャンセル料、怪我をした乗客への見舞金、焼損した車両、関連機器の修理費など広範囲で多額の損害を被ったと推測されます。

 

 JR東海は、列車の安全な運行について最大限の配慮を求められますが、利用客が1日あたり数十万人という現実のもと、飛行機のように全ての乗降客のセキュリティチェックを実施することは現実的ではないでしょう。そうすると、今回の事件をめぐって、、JR東海が乗客に対する安全配慮義務違反の責任を問われることは考えにくいです。

 

泣き寝入りになることも!

 

 では、JR東海は、いったい誰に損害の補償を求めていけばよいのでしょうか。

 

 まず思いつくのは容疑者の遺族です。遺族は相続により容疑者の権利義務を承継しますので、遺族が相続を承認すれば遺族に対して損賠賠償を請求していくことが可能です。しかし、普通に考えれば、多額の賠償義務を背負いきれない遺族は相続を放棄することになるでしょう。

 

 仮に容疑者が精神疾患で事件に対する責任能力がない状況であった場合は、容疑者を法的に監督すべき責任がある者(身内、施設の責任者など)が固有に責任を負うことがあります。しかし、この場合も、億を超えると予想されるJR東海の損害を賠償できるだけの能力があるとは思えません。


 JR東海にしてみれば踏んだり蹴ったりですが、今回の事件を教訓に、事件の発生の経緯と発生後の対処方法について綿密な検証をしたうえで、今後の同種犯罪の防止のためにどのようなことができるのかを考えて、損害の発生ないし拡大のリスクを最小限に抑えるための対策を考えていくしかないでしょう。

 

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2015.06.15更新

北海道砂川市内で一家5人死傷事故が発生!

 

 今月6日、北海道の砂川市内の交差点で1家5人が乗った軽ワゴン車と、信号を無視して交差点に進入したとみられる乗用車(RV車)が衝突し、軽ワゴン車に乗っていた親子5人のうち4人が死亡し、1人が重体となる事故が発生しました。

 RV車には直前まで居酒屋で飲酒していた友人数人が乗車し、時速100キロを超える猛スピードで赤信号の交差点に進入したとされています。

 

 また、この事故では、軽ワゴン車から投げ出された16歳の男子高校生が、猛スピードで走ってきた後続のトラックに現場から約1.5キロにわたって引きずられ、死亡しました。男子高校生は、死体で発見されましたが、死因は胸などを圧迫されたことによる窒息死であったそうで、引きずられていたときは未だ生きていたようです。

 トラックを運転していた容疑者も、RV車に乗っていた友人らとともに飲酒をして、現場の道路を猛スピードでカーレースのように走っていたようです。

 

 この事故で、RV車の運転者とトラックの運転者が逮捕されました。逮捕容疑は、それぞれ危険運転致死傷罪(RV車)、道路交通法の救護義務違反(ひき逃げ)(トラック)です

 

 大変痛ましい事故で、繰り返される飲酒運転による重大事故にやりきれない気持ちでいっぱいです。1家5人のうち、1人だけ助かった12歳の女の子が不憫でなりません。

 

 高校生を引きずったトラックの運転者は、「人をひいた認識はない。」と容疑を否認しているようですが、事故現場から高校生が発見された現場まで、蛇行運転をした形跡があったようですから、意図的に人を振り払おうとしていた様子がうかがえます。

 

懲役30年の刑に処せられることも!

 

 この件で、先日テレビ局の取材を受けました。

 

 RV車の運転者は、時速100キロを超える猛スピードで赤信号を無視して交差点に進入し事故を起こしていますので、危険運転致死傷罪で起訴されることになると思います。しかも、トラックの運転者とは、直前にいっしょに飲酒し、猛スピードでカーレースのようなことをしていたようですので、自動車運転過失致死傷罪の共同正犯(共犯で、ともに全体について罪を問われます。)が成立し、16歳の高校生を含む4名の死亡と1名の重体について責任を問われることになるでしょう。

 結果の重大性から考えると、最高刑の懲役20年近くで処罰されることになると思います(スピード違反や飲酒といった道路交通法違反の罪も合わせて立件されると20年以上になる可能性はありますが、証拠不十分で起訴されない可能性があります)。

 

 他方トラックの運転者は、RV車の運転者と危険な運転を共同で行い死傷の結果をもたらしていますので、危険運転致死傷罪の共同正犯が成立し、この罪と逮捕容疑となった道路交通法の救護義務違反(ひき逃げ)で起訴される可能性が高いのではないかと思います。
 これらの罪は併合罪となり処断刑の最高は30年です。事故後高校生を1.5キロにわたってひきずっているなど犯情も悪いですので、かなり重い処罰が予想されます。

 

殺人罪で起訴されることもある!

 

 また、高校生のひきずり行為については、生きた人間をひきずっている認識があり、死んでもよいと考えて振り落とそうとしていたとすれば、殺人罪での起訴も考えられます。

 

 2008年10月に大阪市北区梅田で起きた飲酒無免許のひき逃げ事件で、同様に事故後3キロにわたって被害者を引きずり死亡させた事件は、殺人罪と道路交通法違反(飲酒、無免許)で起訴されています。このときの被害者は1名でしたが、裁判所の判決は懲役15年でした。

 

 砂川市の事件は容疑者が自首していますが、飲酒運転の発覚を逃れる意図があったとも見えますし、人をひきずった事実を不合理に否認していること、被害者の数が5人と多いことなどを考えると、さらに重い刑罰が科せられる可能性があります。

 

 加害者は任意保険にも加入していなかったと言われています。残された遺族が十分な補償を受けられない可能性があります。容疑者に対しては、心からの反省を促し、同種犯罪の防止のためにも適切な処罰がされることが望まれます。

 

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2015.05.25更新

飼い犬が通行人に噛みついて飼い主が逮捕! 

 

先日某テレビ局の取材で、飼い犬が人に怪我をさせたとして飼い主が逮捕される事件のインタビューを受けました。 

 

 東京都世田谷区で犬を6匹、家のなかで放し飼いにしていた容疑者が、玄関の扉を開けたとたん犬が外に出て行って通行人に噛みついたそうです。
 容疑者は、過去に何度も犬の飼い方について保健所から指導を受けていたらしく、一向に改善が見られなかったことから警察も悪質と判断し逮捕に踏み切ったようです。また、狂犬病予防法の予防接種も受けていなかったようです。逮捕事実は、放し飼いをしていた飼い犬が通行人に軽傷を負わせた重過失傷害罪でした。

 

 確かに、放し飼いは都道府県の条例で禁止されており、罰則も設けられていますので違法です。放し飼いにより他人に危害を加えたとなると逮捕もやむを得ない面はあります。

 しかし、実際のところ、家族同然にかわいがっている犬を家のなかで放し飼いにしている家庭は結構あるでしょうし、散歩中の道路や公園でもリードを付けずに犬を遊ばせている光景もよく目にします。

 ですから、逮捕されるかどうかはともかく、ちょっとした不注意で他人に怪我を負わせるリスクは決して他人事ではありません。

 

事故への備えは飼い主の責任で!

 

 普段はおとなしく、人に怪我を負わせるような犬でなくとも、犬の習性から外部の刺激に対して急に噛みつくことがあります。そのとき、大事に至らなければよいですが、なかには転倒して骨折等の重傷を負わせるケースもあります。その場合、飼い主が責任を免れることは、まず無理です。

 過去の裁判でも、家で放し飼いをしていた犬が道路に飛び出して通行人に怪我を負わせた事件で、事件当時、家に在宅していた妻だけでなく、外出していた他の家族にも責任を認めたものがあります。

 

 番組でも、公園で飼い主が大型犬をリードも付けずに遊ばせていて、散歩中の女性に大怪我を負わせた事件が紹介されていました。裁判所が飼い主に命じたのは2000万円近くの賠償責任でした。
 保険に加入していなければ飼い主には大変な負担になり、飼い主の人生を大きく狂わせることにもなりかねません。被害弁償が十分になされなければ被害者も泣き寝入りを強いられます。

 

 最近の統計で、飼い犬の数は1000万頭を超えているそうです。犬の咬傷事故も年間4000件超で高止まりしており、うち95%が飼い犬による事故だそうです。

 やはり犬をコントロールできるのは飼い主ですから、リスクを常に念頭において、保険に加入するなど万が一に備えたいものです。

 


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2015.05.14更新

小学校の児童が他人に与えた損害について最高裁が両親の責任を否定!

 

平成27年4月9日に最高裁が出した判決が話題になっています。

 

 判決の事案は、小学校の児童が放課後にサッカーのフリーキックの練習をしていたところ、ボールが校庭から道路に飛出し、たまたまバイクで通りかかった80代の男性が転倒し、1年4ヶ月後に亡くなったという事件です。最高裁は、男性の遺族が児童の両親を訴えた損害賠償請求を退けました。

 

 この判決が注目されているのは、当時小学6年生の児童が起こした死傷事故について、従来、ほぼ無条件で責任を負うとされていた法定監督義務者である両親の責任を否定した点です。

 

小さい子供の親には重い責任が課せられている! 

 

 民法は、自己の行為の責任を理解する能力のない者を責任無能力者とし、およそ中学入学時までの児童は民事の損害賠償責任を負わないとしています。
 その代わり、父母など児童を監督する義務を負う者が児童に代わって責任を負うとしています(民法714条1項)。
 この監督義務者の責任は、自ら義務を怠らなかったこと、又はその義務を怠らなくても損害が生じたことを証明すれば免責されることになっていますが、実際には、免責の主張が認められることは殆どなく、監督義務者は、事実上無条件の責任を負うとされてきました。

 

 例えば、平成25年7月4日の神戸地裁の判決は、当時11歳であった小学生の児童が、夜間習い事の帰りにマウンテンバイク乗って住宅街の坂道を高速で下っていたところ、散歩していた女性と正面衝突し、女性に意識不明の重症を負わせた事件で、児童の母親に総額9500万円の損害賠償の支払を命じました。

 このとき、児童は責任無能力者でしたので、被害者は母親を訴えました。裁判所は、自転車のような人に危害を与えるおそれのある乗り物を子供に運転させるにあたっては、親は児童に対し、自転車の運転に関する十分な指導や注意をしなければならないとし、当時児童はヘルメットをかぶっていないなど、交通ルールに反した乗り方をしていたので、母親の「指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていない」としました。

 日頃、子供に交通ルールを守るよう一般的な注意指導をしていただけでは責任を免れないとしたわけです。

 

今回の最高裁判決は必ずしも親の責任を軽くみたわけではない!

 

 これに対し、サッカーボールの事件で最高裁は、「責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが、本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,上記各事実に照らすと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない」、「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ない」、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」としました。

 つまり、親が日頃から人に危害を与えないよう一般的な注意指導をしていただけであっても、該当する行為が、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為」であれば、親に監督義務違反の責任を問うことはできない、としたのです。

 

 確かに、最高裁の事例を見れば、一般的に危険性の低い行為からたまたま発生した事故について、親がいつも子供を監視して注意指導しなければならなくなる責任を負わせるのは酷な事案であったと言えそうです。

 しかし、注意すべきは、この最高裁の判決によって、今後親の責任が一般的に軽減されることではないということです。

 

 上記自転車の事案との違いは、サッカーボールの事案は、学校の校庭内で所定のゴールをめがけてサッカーボールを蹴るという、ごく普通の校庭の使用方法であったということです。

 

 ルールに沿った通常の行為である限り、たとえ他人に怪我を負わせたとしても違法ではない、という常識的な判断であったとも言えます。
 ですから、校庭の事案でも、ボールが頻繁に道路に飛び出していたとか、過去にも同様の事故が起こっていたなど事情があれば、結論は変わっていた可能性は十分にあります。

 その意味で、今回の最高裁判決を一般化することはできないと思います。

 


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2015.05.07更新

自転車の無謀運転者に対する安全講習制度がスタート!

 

 平成27年6月1日から、悪質な違反運転を繰り返す自転車運転者に対し、安全講習の受講が義務づけられます(道路交通法108条の2)。

 

 これは、平成25年6月14日に公布された改正道路交通法によって新しく導入された制度で、悪質な違反運転を繰り返す自転車運転者に対し、安全講習を義務づけることによって、交通規範意識を高め、自転車が関与する交通事故を未然に防ぐことを目的としています。

 

 受講を命じられることになる悪質な違反運転(危険行為)とは、「信号無視」、「一時停止義務違反」、「踏切内進入禁止違反」、「酒酔い運転」など次の14項目に該当する行為です(法施行令41条の3)。

① 信号無視(法第7条)
② 通行禁止違反(法第8条1項)
③ 歩行者用道路における車両の義務違反(徐行義務違反)(法第9条)
④ 通行区分違反(法第17条第1項、第4項又は第6項)
⑤ 路側帯通行時の歩行者の通行妨害(法第17条の2第2項)
⑥ 遮断踏切立入り(法第33条2項)
⑦ 交差点安全進行義務違反等(法第36条)
⑧ 交差点優先車妨害等(法第37条)
⑨ 環状交差点安全進行義務違反等(法第37条の2)
⑩ 指定場所一時不停止等(法第43条)
⑪ 歩道通行時の通行方法違反(法第63条の4第2項)
⑫ 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転(法第63条の9第1項)
⑬ 酒酔い運転(法第65条第1項)
⑭ 安全運転義務違反(法第70条)

 

3年以内に2回以上の違反で受講が義務づけられる! 

 

 これらの違反者は、最初に警察官から指導、警告を受け、従わない場合には、交通違反切符を交付されます。3年以内に2回以上切符の交付を受けると講習の受講対象となります。

 講習は、運転者としての資質の向上に関すること、自転車の運転について必要な適性並びに道路交通の現状および交通事故の実態その他の自転車の運転について必要な知識について行うこととされています(法施行規則38条)。

 受講時間は3時間、受講料は標準が5700円となっています。都道府県公安委員会の受講命令に従わない者に対しては、5万円以下の罰金が科せられます(法108条の3の4、120条1項17号)。

 

自転車の安全運転5原則の順守を!

 

 自転車が関与する交通事故の件数が全体の20%近くに達しており(都内は34%超)、うち主たる責任が自転車にある事故が1万7000件を超え、被害者救済のための保険制度が十分でない現状を考えると必要最低限の規制としてやむを得ない時期に来ているように感じます。
 これを機会に、自転車安全運転の5原則を守って快適な自転車ライフを過ごしたいものです。

(自転車安全運転の5原則)
①自転車は、車道が原則、歩道は例外
②車道は左側を通行
③歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
④安全ルールを守る(飲酒運転・二人乗り・並進の禁止、夜間はライトを点灯、交差点での信号遵守と一時停止・安全確認)
⑤子どもはヘルメットを着用

 


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2015.04.25更新

もらい事故で損害賠償を命じられた判決(福井地裁)

 

平成27年4月13日の福井地裁の交通事故の判決が話題なっています。

 

 この事故は、平成24年4月30日の午前7時過ぎに福井県あわら市内の国道で起きた車両同士の正面衝突事故です。居眠りをした大学生が運転する車がセンターラインをオーバーし、対向車線を走ってきた車と正面衝突、助手席に乗っていた友人で、車の所有者でもある大学生が脳挫傷等で死亡したという事故です。

 

 この裁判で、死亡した友人の遺族が責任追及をしたのは、運転をしていた友人の大学生と対向車線を走ってきた車の所有者でした。

 この判決で注目すべきは、裁判所が、対向車線を走ってきて、いわば「もらい事故」に遭った車の所有者の責任を認めたことです。

 

 現場は、片側1車線の国道で追越しが禁止されていました。対向車線を走ってきて「もらい事故」に遭った車の所有者は、まさか自分が責任を問われることになるとは思わなかったでしょう。

 

 しかし、裁判所は、対向車側の運転手が、「どの時点でG車(センターラインをはみだした車)を発見することが可能であったかを証拠上認定することができない」ため、「過失があったと認めることはできない」とする一方、「実際よりも早い段階でG車(センターラインをはみ出した車)の動向を発見していれば、その時点で急制動の措置を講じてG車と衝突する以前にF車(自車)を完全に停車させることにより,少なくとも衝突による衝撃を減じたり,クラクションを鳴らすことにより衝突を回避したりすることができた可能性も否定できない」として、対向車側の運転手に過失がなかったとも言えないとしました。
 そして、過失があったともなかったとも判断がつかない以上、対向車側の車の所有者の責任を認めざるを得ない、としました。

 

判決は間違いなのか?

 

一見理不尽とも思えるこの判決ですが、実は法律を正確に適用した結果です。

 

 今回の判決は自動車損害賠償保障法(自賠法)3条を根拠にしています。

 自賠法は、自動車の有用性と危険性を考慮し、自動車の運行によって利益を得る者、危険な乗り物を保有する者に、重い注意義務を課しています。

 具体的には、自動車の所有者などの「運行供用者」が、自動車の運行によって他人の生命と身体を害した場合には、次の3点を自ら証明しない限り、責任を免れないとしています。

(1)自己及び運転者が注意を怠らなかったこと
(2)被害者又は運転者以外の第三者に故意や過失があったこと
(3)自動車に構造上の欠陥や機能上の障害がなかったこと

 つまり、この3点については、「運行供用者」の側に立証責任を課したわけです。

 

 今回の判決は、対向車線を走ってきた車の所有者が、(1)の証明を尽くせなかったために免責を認めませんでした。
 つまり、裁判所は、「運行供用者」側に過失があるともないとも判断がつかないので、立証責任のルールに従って、証明を尽くせなかった「運行供用者」側を敗訴させたのです。

 

控訴審では違った判決も

 

 もちろん、本当にどちらとも判断がつかなかったのか、それとも居眠り運転をした側の一方的過失であったのかは、事実認定の問題ですから、証拠やその評価の仕方によって異なった結論になることはあります。

 

 ですから、敗訴した対向車両の所有者側が控訴し、センターラインはみ出してきた車の存在に気づいた位置を特定したうえ、たとえその時点で直ちにブレーキを踏み、あるいはクラクションを鳴らしたとしても、衝突を回避することはできなかったことを証明できれば、第1審の判決が覆る可能性があります。

 

 ところで、この判決は、対向車線を走ってきた車側の過失を6割と認定しています。これを高いと見るか低いとみるかも判断が分かれるところだと思います。控訴された後の上級審の判決の内容を注目したと思います。

 

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2015.03.15更新

自転車の違反運転者に対する講習制度がいよいよ始まる!

 

 平成27年1月20日、悪質な違反を繰り返した自転車の運転者に安全講習を義務づける改正道路交通法の施行令が閣議決定され、同年6月1日から施行されることが決まりました。

 これは、信号無視や酒酔いなど14項目の悪質な違反(危険行為)で3年以内に2回以上摘発された運転者に、都道府県の公安委員会が安全講習の受講を命ずるものです。

 命令に従わない者に対しては5万円以下の罰金が科せられます。

 自転車が絡む事故が交通事故全体の2割を占める現状や、悪質な自転車運転者による重大事故発生の増大を受けた対策です。

 

自転車の交通違反に対しても罰則が科せられる! 

 

 自転車は道路交通法上の車両(軽車両)ですので、同法違反の行為に対しては、自動車やバイクと同様、刑事罰を科せられることがあります(法第2条1項8号11号)。

 最近は、携帯電話を使用しながらの自転車の運転や、酒酔い、信号無視、一時停止義務違反などによる重大事故が問題となっています。

 

 酒酔いを例にとれば、自転車も、自動車・バイクと同様、酒気帯び運転が禁止され(法65条1項)、酒酔い運転、つまり「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態で自転車を運転した場合」には罰則の適用もあります(法117条の2第1号、65条1項、117条の2の2第3号)。

 罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金と非常の重く、自転車を運転していて人に怪我をさせたり、死亡させたりした場合の重過失致死傷罪(刑法211条1項後段)と同程度の重さです。

 

 また、自動車・バイクと同様、自転車の運転者だけでなく、同乗者や自転車を貸し与えた者、お酒を提供したり勧めたりした者も処罰されます。

 自転車を貸し与えた者には、酒酔い運転をした者と同じ5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(法117条の2第2号、65条2項)が、お酒を提供したり勧めたりした者には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(法117条の2の2第5号、65条3項)が科せられます。

 

悪質な自転車運転者には、自動車の免許停止処分が課せられることも!

 

 また、酒酔い運転で人身事故を起こせば、被害者に対し民事上の損害賠償責任を負い、怪我の内容によっては数千万円もの損害賠償を命じられることがあります。

 

 さらに、自転車には運転免許制度はありませんが、飲酒運転を繰り返す悪質な運転者や飲酒ひき逃げの人身事故を起こした者などの悪質運手者に対しては、たとえ自転車の違反であっても、運転免許保有者に対し、「点数制度によらない行政処分」として、6ヶ月を超えない範囲で自動車等の運転免許停止処分が下されることもあります(法103条1項8号、施行令38条5項2号ハ)。

 

 「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」のキャッチフレーズが自転車にも適用される時代になりました。

 なお、酒酔い運転の罪は、自転車の「運転」行為に対して成立する犯罪ですので、自転車を押して歩いていれば問題ありません(法2条3項2号)。

 

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投稿者: 弁護士好川久治

2015.03.12更新

スリップストリーム

 

 車のレースでは、前を走る車を追い抜くために先行車のリアギリギリに接近することがよくあります。これは空力を利用した追い抜きの仕方で非常に有効な場合があります(スリップストリーム)。

 

 しかし、これを一般道でやると大変なことになります。昔、高速道路でスリップストリームを利用して追い抜きをしようとした車両が先行車に衝突して運転者が死亡する事故がありました。

 

あおり行為等で重い罰則も! 

 

 道路を走っていると、速度制限を超えて走行する後続の車両が、速度の遅い先行車両をあおる行為をよく見かけます。しかし、先行車両の急な減速等により追突事故が起きれば大惨事につながります。道路交通法では、車両は、先行車両が急に停止したときでも、これに追突することなく回避できるために必要な車間距離を保つことが義務づけられています(同法26条)。

 

 車両は、運転者が危険を感じてブレーキを踏むまでのわずかな時間でも前進します。実際にブレーキが効きはじめるまでの距離を空走距離と言いますが、車両が停止するには、この空走距離に加えて、ブレーキが効き始めてから車が停止するまでの制動距離が必要です。運転者は、この二つの距離を十分に考慮して先行車両との距離を保たなければなりません。

 

 道路でのあおり行為等、危険な行為に対しては、上記道路交通法の車間距離保持義務違反となり、違反点数2点、反則金6千円~1万2千円を課せられ、反則金を納めなければ3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処せられます(同法119条1項1号の4、同法26条)。

 

 また、あおり行為等により事故を起こし、人を死傷させれば、危険運転致死傷罪として、負傷させた場合は15年以下の懲役に、死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役刑に処せられます(自動車運転死傷行為処罰法2条)。

 

思いっきり走りたいならサーキット場へ!

 

 急いでいるからと、周りの車両の運転手の運転操作を誤らせるような危険なあおり行為等は厳に慎まなければなりません。

 

 思いっきり走りたいならサーキット場へ行くとよいです。簡単な講習を受けなければなりませんが、サーキット場のルールを守ってさえいれば、スピード違反の心配はいりません。

 

 サーキットで走ると、自動車の性能がよくわかり、確実に運転技量も向上します。一般道では、自然と安全運転を心がけるようになりますので、一度チャレンジしてみてください。

 

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あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
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