2015.09.27更新

3年越しの裁判が終わった!


 先日、3年越しで争っていた裁判が終わりました。3年というと、どんな大事件かと思われるかもしれませんが、実はよくある貸金の返還を求める裁判でした。

 

 貸金の裁判というと、普通は借用書があって、返済しなければならない金額にも争いがなく、裁判では、どうやって支払っていくか、という和解の話しだけが進んでいくことが多い事件です。

 

 しかし、この事件はそうではありませんでした。

 

 借用書はなく、あるのはノートにメモ程度に書いた金額と日付、借りた本人の署名があるだけでした。貸した時期も10年以上前で、貸した回数は10回以上、しかも本人は既に他界。裁判は、相続人を相手に貸金の返還を求めるものでした。

 

裁判では証拠が全て

 

 本人が生きていれば、金額の横に自分の署名があるノートを出されれば、それが借りたお金なのか、もらったものなのか、本当にお金を受け取っているのか、そうでないのか、などを争うことはそれほど多くないです。しかし、本人が亡くなっていると、裁判の相手は事情を全く知らない相続人ですから、貸した当時の証拠のみが手がかりとなります。

 

 貸主としては、相続人から、「借りたかどうかわからない」、「借用書がないのはおかしい」、「本人は援助を受けていた可能性もある」と反論されれば、「そうでない」ということを一つ一つ証明していかなければなりません。

 

 ノートだけでは心細いので、当時の通帳や税務申告資料などを手がかりに収入と資産状況を精査し、10回以上に及ぶ貸したお金の一つ一つについて、お金の流れを逐一証明し、これを相手が受け取ったことを相手の通帳の証拠提出を求めて、証明していきます。

 

 相手の通帳は当然には訴訟には提出されませんので、銀行に対して裁判所から提出を命じてもらいます。銀行も簡単には応じませんので、裁判所から通帳履歴の提出命令を出してもらい、記録を出してもらいます。それでも、通帳の保管期間の関係で全てが提出されるとは限りません。

 

リスク管理が大切

 

 このような一見簡単そうにみえる裁判も、悪条件が重なると長期戦となります。どんなに親しい間柄でも、借用書と領収書はきちんと用意してお金を貸すべきだと痛感させられました。

 

 結果は、ほぼ満額の返還を受けられる内容で和解が成立しましたが、結論に至る3年間は、依頼者にとっても、非常にストレスの連続だったと思います。

 

 今回の件に限らず、どのような場合でも万が一に備えて、争いとなれば何が起こるのか、その場合に何が必要となるのかを考えて行動する習慣をもつことが大切です。


 争われる余地を残さなければ紛争にもなりませんので、予防の意味でも心がけておきたいものです。

 

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2015.07.21更新

女性雑誌の取材を受けた 

 

 先日、女性雑誌の取材で、「ハラスメントと闘う女性たち」について話を聴かれました。武井咲主演のドラマ「エイジハラスメント」が始まったことや、最近女性に対するマタニティハラスメント(妊娠・出産、育児休業等を理由とする解雇、不利益な異動、減給、降格などの不利益な取扱い)が問題視されていることなどが背景にあると見られます。

 

30以上の「ハラスメント」があるなんて!

  

 「ハラスメント」は、人間と人間の人格のぶつかり合いのなかで起こる人権侵害行為です。夫婦間や交際する男女間でのDVや、友人同士・同僚間での嫌がらせ・いじめをはじめ、職場、医療現場、大学、地域社会などで力関係を背景として、強い立場の者が弱い立場の者に対して度を越した嫌がらせを行うことを総称したものです。

 

 取材のなかで、30以上のハラスメントがあると聞いて驚きました。

 言葉が一人歩きして何でもかんでも「ハラスメント」だとして問題にするのもどうかと思いますが、言葉が生まれることで、ハラスメントの存在を身近に感じ、世間の認知も広まることで、改めてハラスメントの問題点と被害者救済、再発防止などを考える機会になれば、ハラスメントで苦しんでいる人たちの人権救済につながると思います。

 

 2014年の統計で、過労や職場でのハラスメントでうつ病などの精神疾患に罹患し、労災認定された人が497名に上ったそうです。これは前年対比で約14%増です。実際に被害事例が増えているのかもしれませんが、最近急速に「ハラスメント」という言葉が広まったことで、被害が認知されやすくなり、被害者も自ら名乗り出やすくなった、という側面もあると思います。

 

ハラスメントは早期解決が大切

 

  ハラスメントは、被害が発生すると早期解決が大切です。放置すると加害者による行動がエスカレートする可能性がありますし、何よりも被害を受けている人が精神的に疲労困憊し、改善や救済に向けた動きをとれなくなることが問題です。
 もちろん、被害者の救済のためにはハラスメントに理解を示す協力者の存在が重要です。友人や家族、会社の通報窓口、労働組合、労働局、弁護士会などの相談機関を利用することも躊躇するべきではありません。

 

 職場の理解がない、組織が被害救済に消極的、再発防止が徹底しないような場合には、退職をも念頭に、法的措置をとらざるをえないこともあるでしょう。しかし、その前に、まずは手を尽くして組織に対し、被害救済とハラスメントの原因の除去、関係者の処分や異動、再発防止の徹底などを求めていくのが先でしょう。

 

ハラスメントはリスクマネジメントの問題でもある

 

 ハラスメントは、被害が発生する度に問題を解決していくだけでは抜本的な予防策にはなりません。ハラスメントが起こりやすい職場環境を是正していかなければ、第二、第三の被害が発生してしまいます。ハラスメントが組織全体の問題であることを再確認したうえ、組織の取り組みの改善、ハラスメントを許さないという組織の強い意識と行動、人権教育、ハラスメントの早期発見と被害救済、関係者の処分、再発防止策の策定と再教育など、全体的な対策が必要です。
 ハラスメントの問題が、人権侵害の問題であるとともに、組織におけるマネジメントの問題であると言われるゆえんです。

 

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2015.07.06更新

新幹線の車内で焼身自殺!

 

 先日、東海道新幹線の車内で71歳の男性が焼身自殺をした事件が報道されていました。電車内でガソリンらしき油を体に浴びて火をつけるという前代未聞の事件に、日常生活のなにげない場所に人々の安全を脅かす危険が潜んでいることを改めて実感させられました。


 この事件で、容疑者の男性が死亡したほか、乗客の女性1人が煙にまかれて死亡、その他30名近くの乗客が重軽傷を負ったようです。東海道線は多数の列車が運休し、多数の乗客に影響を与えたようです。警察は現住建造物等放火と殺人の容疑で捜査をしていますが、容疑者は既に死亡していますので、いずれ容疑者死亡のまま送検され、不起訴になる見込みです。

 

JR東海に多大な損害が発生


 JR東海は、けが人の救助や列車運行の安全性の確保、警察の捜査への協力等のために列車の運行を停止せざるをえません。そのため、乗客への影響は避けられず、代替交通機関の手配による損害(振替輸送費)、事故の対応にあたる社員の人件費(超過勤務・休日出勤に係る各種手当・宿泊代など)、乗車券や特急券の払戻し・キャンセル料、怪我をした乗客への見舞金、焼損した車両、関連機器の修理費など広範囲で多額の損害を被ったと推測されます。

 

 JR東海は、列車の安全な運行について最大限の配慮を求められますが、利用客が1日あたり数十万人という現実のもと、飛行機のように全ての乗降客のセキュリティチェックを実施することは現実的ではないでしょう。そうすると、今回の事件をめぐって、、JR東海が乗客に対する安全配慮義務違反の責任を問われることは考えにくいです。

 

泣き寝入りになることも!

 

 では、JR東海は、いったい誰に損害の補償を求めていけばよいのでしょうか。

 

 まず思いつくのは容疑者の遺族です。遺族は相続により容疑者の権利義務を承継しますので、遺族が相続を承認すれば遺族に対して損賠賠償を請求していくことが可能です。しかし、普通に考えれば、多額の賠償義務を背負いきれない遺族は相続を放棄することになるでしょう。

 

 仮に容疑者が精神疾患で事件に対する責任能力がない状況であった場合は、容疑者を法的に監督すべき責任がある者(身内、施設の責任者など)が固有に責任を負うことがあります。しかし、この場合も、億を超えると予想されるJR東海の損害を賠償できるだけの能力があるとは思えません。


 JR東海にしてみれば踏んだり蹴ったりですが、今回の事件を教訓に、事件の発生の経緯と発生後の対処方法について綿密な検証をしたうえで、今後の同種犯罪の防止のためにどのようなことができるのかを考えて、損害の発生ないし拡大のリスクを最小限に抑えるための対策を考えていくしかないでしょう。

 

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2015.05.25更新

飼い犬が通行人に噛みついて飼い主が逮捕! 

 

先日某テレビ局の取材で、飼い犬が人に怪我をさせたとして飼い主が逮捕される事件のインタビューを受けました。 

 

 東京都世田谷区で犬を6匹、家のなかで放し飼いにしていた容疑者が、玄関の扉を開けたとたん犬が外に出て行って通行人に噛みついたそうです。
 容疑者は、過去に何度も犬の飼い方について保健所から指導を受けていたらしく、一向に改善が見られなかったことから警察も悪質と判断し逮捕に踏み切ったようです。また、狂犬病予防法の予防接種も受けていなかったようです。逮捕事実は、放し飼いをしていた飼い犬が通行人に軽傷を負わせた重過失傷害罪でした。

 

 確かに、放し飼いは都道府県の条例で禁止されており、罰則も設けられていますので違法です。放し飼いにより他人に危害を加えたとなると逮捕もやむを得ない面はあります。

 しかし、実際のところ、家族同然にかわいがっている犬を家のなかで放し飼いにしている家庭は結構あるでしょうし、散歩中の道路や公園でもリードを付けずに犬を遊ばせている光景もよく目にします。

 ですから、逮捕されるかどうかはともかく、ちょっとした不注意で他人に怪我を負わせるリスクは決して他人事ではありません。

 

事故への備えは飼い主の責任で!

 

 普段はおとなしく、人に怪我を負わせるような犬でなくとも、犬の習性から外部の刺激に対して急に噛みつくことがあります。そのとき、大事に至らなければよいですが、なかには転倒して骨折等の重傷を負わせるケースもあります。その場合、飼い主が責任を免れることは、まず無理です。

 過去の裁判でも、家で放し飼いをしていた犬が道路に飛び出して通行人に怪我を負わせた事件で、事件当時、家に在宅していた妻だけでなく、外出していた他の家族にも責任を認めたものがあります。

 

 番組でも、公園で飼い主が大型犬をリードも付けずに遊ばせていて、散歩中の女性に大怪我を負わせた事件が紹介されていました。裁判所が飼い主に命じたのは2000万円近くの賠償責任でした。
 保険に加入していなければ飼い主には大変な負担になり、飼い主の人生を大きく狂わせることにもなりかねません。被害弁償が十分になされなければ被害者も泣き寝入りを強いられます。

 

 最近の統計で、飼い犬の数は1000万頭を超えているそうです。犬の咬傷事故も年間4000件超で高止まりしており、うち95%が飼い犬による事故だそうです。

 やはり犬をコントロールできるのは飼い主ですから、リスクを常に念頭において、保険に加入するなど万が一に備えたいものです。

 


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2015.05.14更新

小学校の児童が他人に与えた損害について最高裁が両親の責任を否定!

 

平成27年4月9日に最高裁が出した判決が話題になっています。

 

 判決の事案は、小学校の児童が放課後にサッカーのフリーキックの練習をしていたところ、ボールが校庭から道路に飛出し、たまたまバイクで通りかかった80代の男性が転倒し、1年4ヶ月後に亡くなったという事件です。最高裁は、男性の遺族が児童の両親を訴えた損害賠償請求を退けました。

 

 この判決が注目されているのは、当時小学6年生の児童が起こした死傷事故について、従来、ほぼ無条件で責任を負うとされていた法定監督義務者である両親の責任を否定した点です。

 

小さい子供の親には重い責任が課せられている! 

 

 民法は、自己の行為の責任を理解する能力のない者を責任無能力者とし、およそ中学入学時までの児童は民事の損害賠償責任を負わないとしています。
 その代わり、父母など児童を監督する義務を負う者が児童に代わって責任を負うとしています(民法714条1項)。
 この監督義務者の責任は、自ら義務を怠らなかったこと、又はその義務を怠らなくても損害が生じたことを証明すれば免責されることになっていますが、実際には、免責の主張が認められることは殆どなく、監督義務者は、事実上無条件の責任を負うとされてきました。

 

 例えば、平成25年7月4日の神戸地裁の判決は、当時11歳であった小学生の児童が、夜間習い事の帰りにマウンテンバイク乗って住宅街の坂道を高速で下っていたところ、散歩していた女性と正面衝突し、女性に意識不明の重症を負わせた事件で、児童の母親に総額9500万円の損害賠償の支払を命じました。

 このとき、児童は責任無能力者でしたので、被害者は母親を訴えました。裁判所は、自転車のような人に危害を与えるおそれのある乗り物を子供に運転させるにあたっては、親は児童に対し、自転車の運転に関する十分な指導や注意をしなければならないとし、当時児童はヘルメットをかぶっていないなど、交通ルールに反した乗り方をしていたので、母親の「指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていない」としました。

 日頃、子供に交通ルールを守るよう一般的な注意指導をしていただけでは責任を免れないとしたわけです。

 

今回の最高裁判決は必ずしも親の責任を軽くみたわけではない!

 

 これに対し、サッカーボールの事件で最高裁は、「責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが、本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,上記各事実に照らすと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない」、「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ない」、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」としました。

 つまり、親が日頃から人に危害を与えないよう一般的な注意指導をしていただけであっても、該当する行為が、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為」であれば、親に監督義務違反の責任を問うことはできない、としたのです。

 

 確かに、最高裁の事例を見れば、一般的に危険性の低い行為からたまたま発生した事故について、親がいつも子供を監視して注意指導しなければならなくなる責任を負わせるのは酷な事案であったと言えそうです。

 しかし、注意すべきは、この最高裁の判決によって、今後親の責任が一般的に軽減されることではないということです。

 

 上記自転車の事案との違いは、サッカーボールの事案は、学校の校庭内で所定のゴールをめがけてサッカーボールを蹴るという、ごく普通の校庭の使用方法であったということです。

 

 ルールに沿った通常の行為である限り、たとえ他人に怪我を負わせたとしても違法ではない、という常識的な判断であったとも言えます。
 ですから、校庭の事案でも、ボールが頻繁に道路に飛び出していたとか、過去にも同様の事故が起こっていたなど事情があれば、結論は変わっていた可能性は十分にあります。

 その意味で、今回の最高裁判決を一般化することはできないと思います。

 


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2015.02.16更新

「明渡し断行」の強制執行ってなに?

 

 先日、とあるマンションの一室の明渡し断行の強制執行に立ち会いました。「明渡し断行」とは、簡単に言えば、建物(貸室)を占拠する居住者を強制的に立ち退かせる手続です。もちろん強制執行ですから、あらかじめ貸室の明渡しを求める裁判に勝訴し、判決をもらったうえでの実施です。

 

 手続ですが、債権者(大家)が貸室明渡しの強制執行を申し立てると、最初に執行官、執行補助者、立会人、鍵屋、債権者(又は代理人である弁護士)が現地に赴き、債務者(居住者)に対して明渡しを催告します。執行官がインターホンを鳴らし、応答がなければ、同行した鍵屋がドア鍵を解錠して中に入ります。

 

 今回は、居留守をつかわれたので、スペアキーでドアを開けると打ち鍵がかかっていてドアは開きませんでした。同行した鍵屋がスコープを使って中を確認し工具でドアを開けようとすると、居住者が鍵を開けて出てきました。居住者は、事態を把握できないらしく、執行官の言っていることも理解していない様子でした。結局その日は1ヶ月後に明渡しを断行すると予告して帰りました。このとき部屋の中に、明渡し期限を書いた公示書を貼ります。その期限が先日の断行日だったわけです。

 

明渡しに応じない居住者は強制的に退去を迫られる!

 

 貸室等の明渡しの強制執行では、通常は断行日までに自主的に退去するケースが殆どです。しかし、まれに自主的に退去しない居住者もいます。

 

 今回も、自主的退去が期待できないと予想されたため、私は数日前に現地に赴き、居住の有無を確認しました。インターフォンを鳴らすと居住者から返答がありました。ドア越しに居住者と話しをすると、どうやら精神的な病を患っているようでした。そのため、私は、区の福祉課に連絡を入れ、生活保護の担当者に状況を説明し、支援を要請しました。

 

 断行日の前日は雨で時折雪が混じるほど寒い一日でした。さすがにこんなに寒い日に追いだされるのは気の毒だなあと思っていたところ、幸い断行日は晴れて、比較的暖かくなり、ほっとしました。

 

 当日予定時刻に現地に到着すると、居住者が自主的に引越の準備をはじめ、執行官が同行した総勢5、6名ほどの業者が次々と荷物を搬出し、小一時間ほどで明渡しは全て完了しました。

 居住者は、区の福祉課のあっせんで一時保護施設に入所できるらしく、荷物も運び出されていきました。

 

 いろいろ事情があって明渡しの強制執行になった事件で、一時はどうなることかと気をもみましたが、ふたを開けてみると滞りなく終わり、ひと安心した一日でした。

 

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2014.12.08更新

ゴルフスイングで事故!

 

 かつて、駅のホームで、傘をゴルフクラブに見立ててスウィングをしている人をよく見かけましたが、最近は殆ど見かけません。

 

 ゴルフと言えば、社会人になってゴルフデビューする人も多いと思いますが、夢中になりすぎて周りの人に危険をもたらさないように注意したいものです。

 

 ゴルフクラブの練習スイング中の事故として過去に問題となった事例を調べてみると、次のようなものがあります。

 

ゴルフ練習場での事故

 

 ゴルフ練習場の隣の打席との設置間隔が狭かったため, 練習者のゴルフクラブが隣の打席の練習者の頭部に当たって怪我をさせた事件がありました。

 この事件では、被害者がゴルフ練習場を訴えましたが、裁判所は、練習場の設置と保存に瑕疵があったとして、ゴルフ練習場の経営者の損害賠償責任を認めました (被害者の過失6割、千葉地裁昭和46年10月29日判決)。

 

 また、同様の事案で、バックスイング時に隣の打席にいた者の前額部にゴルフクラブが当たって負傷させた事件について、今度は被害者が加害者を訴えた事件で、裁判所は、前の打席にいた加害者の損害賠償責任を認めました(被害者の過失7割、東京地方裁判所八王子支部平成元年2月1日判決)。

 

空き地でスイング中の事故 

 

 このほか、空き地でゴルフクラブの素振り練習をしていたところ、素振りの衝撃でクラブヘッドが折れて住宅地内に飛び込み、住民に怪我をさせた事件ついて、 素振り練習者に損害賠償責任を認めたものがあります(大阪地裁昭和36年7月31日判決)。

 裁判所は,練習者が周囲の状況に照らしてスイングの強さ、地点、方向等を選定するのに十分に注意を払うべきであるとしました。

 

路上でスイング中の事故


 路上でのスイング練習中の事故として、 付近をたまたま自転車で通りかかった主婦の胸部にドライバーのヘッドが強打し、心臓挫創で死亡させた事件について、裁判所は、路上でゴルフクラブの素振りをする者は、周囲の状況、殊に接近して来る通行人の有無について十分注意を払い、通行人にゴルフクラブが当たる危険があるときは直ちに素振りを中止して通行人に道を譲り、危険がないことを確認したうえで素振りを行うべき注意義務があるとし、路上でドライバーを素振りした者に、損害賠償責任を認めました (被害者の過失なし、大阪地裁昭和63年3月10日判決)。

 

 ゴルフクラブは時と場所を間違えると凶器になりますので、注意しなければなりません。駅のホームで傘ゴルフをする場合も同じです。

 

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2014.12.04更新

 牛の生レバーを提供した業者が逮捕され、無期限の営業禁止に! 

 

 京都の祇園の焼き肉店で、客に牛の生レバーを提供した経営者が食品衛生法違反の疑いで逮捕され、その後、京都市が業者を無期限の営業禁止処分としたニュースがインターネットに出ていました。

 

 食品衛生法は、国民全体の公衆衛生の確保や、国民の健康の保持を目的とした法律です。
 平成23年に起きたユッケの集団食中毒事件を受け、平成24年7月から、牛レバーを生食用として販売・提供することが禁止されています。

 

 しかし、生レバーに対する客の要望も強く、違法と知りながら生レバーを提供する店舗が未だ存在しているようです。客からの要望があるからとか、かつては普通に提供されていた食材だから大丈夫だろう、と安易な気持ちで法律に違反する業者がいることは容易に想像されます。

 

生レバーは結構危険かも

 

 しかし、生レバーには、次のようなリスクがあるそうです。
(1)牛の肝臓の内部から腸管出血性大腸菌(O157)が検出された
(2)生で食べると、十分に衛生管理を行った新鮮なものでも、食中毒が発生するおそれがある
(3)牛の約1割が保菌し、現段階では保菌の有無の有効な確認方法がない
(4)消毒液による洗浄方法等の有効な予防対策がない
(5)腸管出血性大腸菌は、ほんのわずかな菌で脳症など重篤な疾患を発症し、発症者の死亡率も低くない
(6)人から人への二次感染の危険性もある

 

営業禁止処分の影響は大きい 

 

 客が要望しても、必ずしも生レバーの危険性を十分に理解しているとは限りません。「自己責任」だからと言っていても、まさか自分が中毒になるとは思わないでしょう。また、店がきちんと調理をして提供するのだから安全だろう、と安易に信じて注文していることも多いと推測されます。

 

 食品衛生法に違反する調理販売の禁止違反には、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金(情状により併科)」、法人には「1億円以下の罰金」という思い刑罰が科せられます。

 

 一旦食中毒を引き起こせば命の危険にさらされますので、厳しい処罰をもって臨むことも止むを得ません。今回の事件では、店側が積極的に「生レバーありますよ」と客側に持ち掛けていたそうです。また、店全体として組織的に違法営業を行っていたことから重大事故の発生を予防するために警察は逮捕に踏み切り、京都市も無期限の営業禁止処分にしたと思われます。

 

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2014.11.29更新

ゴルフ場は危険がいっぱい!

 

 秋も深まり芝も枯れてゴルフプレーヤーにとってはスコアアップのチャンス到来です。山々と広大な空に囲まれて思いっきりスイングをしてグッドショットをしたときの爽快感は忘れられないものです。

 

 他方、ゴルフのプレーをしていると、たまに隣のコースから「フォア―」の声とともにボールが飛んできたり、後続の組のプレーヤーが打った球が先行する組のプレーヤーの近くに落下したりするなどのニアミスもよくあります。


 また、同じ組で回っている仲間同士、キャディさんも、ボールを引っかけたり、シャンクで打球が右に飛びだして、ヒヤリとすることもありますので、プレーヤーは周りでラウンドをしている人の動静に十分注意しなければなりません。

 

高額の損害賠償義務を負うことも

 

 もし打球が人に当たって怪我をさせた場合には、プレーヤーは不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負わなければなりません。また、結果が重大であれば、刑事事件として立件され、重過失致死傷罪(刑法211条後段)で処罰される可能性もあります。


 これらは初心者であっても同じです。初心者は初心者なりに、その技量、飛距離等に応じて自己の打球が飛ぶ方向と距離を予測してプレーをしなければなりません。つまり、打球が人に当たって怪我をさせないよう、必要に応じて球を打つのを一時中止したり、タイミングを調整したり、打球の方向の人に注意を促したり、移動を指示したりする義務があります。

 

 被害者が、ショットする位置より前に出ていたり、打者に注意を向けなかったりするなど被害者側にも落ち度がある場合には、その分、プレーヤーは責任が軽減されますが、それでも怪我の程度によっては数百万円から数千万円という相当高額な損害賠償責任を負わなければならないことがあります。

 

 楽しいはずのゴルフが一瞬で悪夢とならないよう、マナーを守りながらプレーを楽しみたいものです。 

 

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2014.11.23更新

雨の日の転倒事故

 

 雨の日にスーパーやコンビニに入ると客が持ち込む傘の滴が床に落ちて滑りやすくなっていることがあると思います。急いでいるときなど、足を取られて転びそうになった経験はないでしょうか。

 

 私自身は、幸い大きな怪我をしたことはないですが、過去には転倒して骨折したという方から相談を受けたことがあります。

 

 屋外であれば、雨の日に地面が濡れて滑りやすくなっていることは容易に分かりますし、自己責任で納得できるケースもあると思いますが、店舗内で同じような転倒事故があれば、やはり店舗の管理責任を問いたくなる気持ちになるのでしょう。

 

お店に損害賠償責任が発生することも!

 

 先例でも、店舗内で、雨でぬれた床の清掃が不十分で客が転倒して怪我をしたケースで、店側の管理責任を問われ、損害賠償責任が認められたケースがあります。
 

 つまり、店舗には、「不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の日常ありうべき服装、履物、行動等、例えば靴底が減っていたり、急いで足早に買い物をするなどは当然の前提として、その安全を図る義務がある」とされるわけです。

 

 骨折をして後遺障害がのこれば、数百万円から数千万円の損害が発生しますので、店側の負担もばかりなりません。

 

転倒した方にも責任が!

 

 もちろん、店舗を訪れる客側にも、雨で床が滑りやすくなっていることは容易に予想できますので、足元に注意を向け、急がず慎重に歩くことが期待されますので、発生した損害から相当大きな過失分が減額されることになります。過失割合は事例ごとに様々で一般化することは難しいですが、半分程度は客側が負担を求められることが多いのではないでしょうか。

 

 怪我をした方も怪我をさせたお店も、ともに痛い結果ですので、雨の日の濡れた床には気をつけたいものです。

 

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