2015.05.25更新

飼い犬が通行人に噛みついて飼い主が逮捕! 

 

先日某テレビ局の取材で、飼い犬が人に怪我をさせたとして飼い主が逮捕される事件のインタビューを受けました。 

 

 東京都世田谷区で犬を6匹、家のなかで放し飼いにしていた容疑者が、玄関の扉を開けたとたん犬が外に出て行って通行人に噛みついたそうです。
 容疑者は、過去に何度も犬の飼い方について保健所から指導を受けていたらしく、一向に改善が見られなかったことから警察も悪質と判断し逮捕に踏み切ったようです。また、狂犬病予防法の予防接種も受けていなかったようです。逮捕事実は、放し飼いをしていた飼い犬が通行人に軽傷を負わせた重過失傷害罪でした。

 

 確かに、放し飼いは都道府県の条例で禁止されており、罰則も設けられていますので違法です。放し飼いにより他人に危害を加えたとなると逮捕もやむを得ない面はあります。

 しかし、実際のところ、家族同然にかわいがっている犬を家のなかで放し飼いにしている家庭は結構あるでしょうし、散歩中の道路や公園でもリードを付けずに犬を遊ばせている光景もよく目にします。

 ですから、逮捕されるかどうかはともかく、ちょっとした不注意で他人に怪我を負わせるリスクは決して他人事ではありません。

 

事故への備えは飼い主の責任で!

 

 普段はおとなしく、人に怪我を負わせるような犬でなくとも、犬の習性から外部の刺激に対して急に噛みつくことがあります。そのとき、大事に至らなければよいですが、なかには転倒して骨折等の重傷を負わせるケースもあります。その場合、飼い主が責任を免れることは、まず無理です。

 過去の裁判でも、家で放し飼いをしていた犬が道路に飛び出して通行人に怪我を負わせた事件で、事件当時、家に在宅していた妻だけでなく、外出していた他の家族にも責任を認めたものがあります。

 

 番組でも、公園で飼い主が大型犬をリードも付けずに遊ばせていて、散歩中の女性に大怪我を負わせた事件が紹介されていました。裁判所が飼い主に命じたのは2000万円近くの賠償責任でした。
 保険に加入していなければ飼い主には大変な負担になり、飼い主の人生を大きく狂わせることにもなりかねません。被害弁償が十分になされなければ被害者も泣き寝入りを強いられます。

 

 最近の統計で、飼い犬の数は1000万頭を超えているそうです。犬の咬傷事故も年間4000件超で高止まりしており、うち95%が飼い犬による事故だそうです。

 やはり犬をコントロールできるのは飼い主ですから、リスクを常に念頭において、保険に加入するなど万が一に備えたいものです。

 


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2015.05.14更新

小学校の児童が他人に与えた損害について最高裁が両親の責任を否定!

 

平成27年4月9日に最高裁が出した判決が話題になっています。

 

 判決の事案は、小学校の児童が放課後にサッカーのフリーキックの練習をしていたところ、ボールが校庭から道路に飛出し、たまたまバイクで通りかかった80代の男性が転倒し、1年4ヶ月後に亡くなったという事件です。最高裁は、男性の遺族が児童の両親を訴えた損害賠償請求を退けました。

 

 この判決が注目されているのは、当時小学6年生の児童が起こした死傷事故について、従来、ほぼ無条件で責任を負うとされていた法定監督義務者である両親の責任を否定した点です。

 

小さい子供の親には重い責任が課せられている! 

 

 民法は、自己の行為の責任を理解する能力のない者を責任無能力者とし、およそ中学入学時までの児童は民事の損害賠償責任を負わないとしています。
 その代わり、父母など児童を監督する義務を負う者が児童に代わって責任を負うとしています(民法714条1項)。
 この監督義務者の責任は、自ら義務を怠らなかったこと、又はその義務を怠らなくても損害が生じたことを証明すれば免責されることになっていますが、実際には、免責の主張が認められることは殆どなく、監督義務者は、事実上無条件の責任を負うとされてきました。

 

 例えば、平成25年7月4日の神戸地裁の判決は、当時11歳であった小学生の児童が、夜間習い事の帰りにマウンテンバイク乗って住宅街の坂道を高速で下っていたところ、散歩していた女性と正面衝突し、女性に意識不明の重症を負わせた事件で、児童の母親に総額9500万円の損害賠償の支払を命じました。

 このとき、児童は責任無能力者でしたので、被害者は母親を訴えました。裁判所は、自転車のような人に危害を与えるおそれのある乗り物を子供に運転させるにあたっては、親は児童に対し、自転車の運転に関する十分な指導や注意をしなければならないとし、当時児童はヘルメットをかぶっていないなど、交通ルールに反した乗り方をしていたので、母親の「指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていない」としました。

 日頃、子供に交通ルールを守るよう一般的な注意指導をしていただけでは責任を免れないとしたわけです。

 

今回の最高裁判決は必ずしも親の責任を軽くみたわけではない!

 

 これに対し、サッカーボールの事件で最高裁は、「責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが、本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,上記各事実に照らすと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない」、「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ない」、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」としました。

 つまり、親が日頃から人に危害を与えないよう一般的な注意指導をしていただけであっても、該当する行為が、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為」であれば、親に監督義務違反の責任を問うことはできない、としたのです。

 

 確かに、最高裁の事例を見れば、一般的に危険性の低い行為からたまたま発生した事故について、親がいつも子供を監視して注意指導しなければならなくなる責任を負わせるのは酷な事案であったと言えそうです。

 しかし、注意すべきは、この最高裁の判決によって、今後親の責任が一般的に軽減されることではないということです。

 

 上記自転車の事案との違いは、サッカーボールの事案は、学校の校庭内で所定のゴールをめがけてサッカーボールを蹴るという、ごく普通の校庭の使用方法であったということです。

 

 ルールに沿った通常の行為である限り、たとえ他人に怪我を負わせたとしても違法ではない、という常識的な判断であったとも言えます。
 ですから、校庭の事案でも、ボールが頻繁に道路に飛び出していたとか、過去にも同様の事故が起こっていたなど事情があれば、結論は変わっていた可能性は十分にあります。

 その意味で、今回の最高裁判決を一般化することはできないと思います。

 


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あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
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