2016.04.27更新

Q.最近年を取って病気がちになっています。自分が死んだあと、二人いる子供らが相続で揉めないか心配です。主人は既に亡くなっています。私は長男夫婦と同居していますが、弟と長男は仲があまりよくありません。


A.遺産相続(遺産分割)は、亡くなった配偶者や子、親、兄弟の遺産を身内で分け合う手続です。常日頃から関係が良好であれば何の問題もなく話し合いで解決できます。

 しかし、身内にはいろいろな事情を抱えた方がいます。仲が良い場合もいれば、そうでない場合もあります。異母(父)兄弟姉妹が相続人になって感情のもつれから争いとなることや、残された配偶者と生前ぎくしゃくしていた義理の両親、兄弟姉妹が相続人になることもあります。

 

 また、生前に故人の面倒をよく看た相続人とそうでない相続人、生前贈与を受けた相続人とそうでない相続人、故人の愛情を一身に受けた子とそうでない子、長男だからと親の遺産を多く相続したいと主張する、以前は遺産に関心がなかったのに経済事情の悪化から自分達の生活のために遺産を受け取りたいと思うようになるなど、事情は様々です。

 

 もちろん、身内との関係を良くしておくことが一番ですが、必ずしもそうでないことも多いご時世ですから、「相続」が「争族」とならないよう対策を考えておく必要があります。

 

 ご質問のケースは、お子さんらの仲が良くないということですから、今のまま相続が発生しますと、それぞれが自分の都合を主張して、収拾がつかなくなる可能性があります。そのならないためにも、誰にどの遺産をどのくらい相続させるのかを具体的に書いた遺言書を残しておくことが肝要です。

 

 遺言書は、簡単なものであれば、自筆で遺言の全文を書いて日付と自署捺印をしておけば最低限の要件を満たしますが、遺言の存在を公証する手段がありませんし、遺言の効力を争われる可能性が高まりますので、余計な紛争の火種を残すことにもなりかねません。

 

 そのため、できれば公証役場で公証人と証人2名の面前で遺言の内容を口授し、公証人が書き取った内容を遺言書として残す公正証書遺言にしておくことが確実です。

 

 公正証書遺言であれば、全国どこの公証役場でも公正証書の存在を確認できますし、公証人という公務員と信頼できる証人の面前で作成された公正証書の効力が争われる心配は少なくなります。

 

 なお、遺産の内容や規模にもよりますが、遺言書には、遺言の内容を実現する遺言執行者を定めておき、万が一のためにその方に責任をもって遺言の内容を実現してもらえるようにしておくことが望ましいでしょう。遺言執行者は、弁護士や司法書士などに依頼することが多いです。

 

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2015.07.19更新

Q.母は、三人兄妹の2番目で、上に姉と弟(私にとって叔母と叔父)がいます。私は弟と二人兄弟です。叔母は生涯独身で子供もいません。叔母はここ10年ほど体調を悪くして入退院を繰り返していたため、母が叔母の看病や身の回りの世話をしてきました。 
 そのため叔母は、母のために遺産を全部譲るという遺言を残してくれているそうです。ところが、最近叔母よりも先に母が亡くなりました。叔母は痴呆で特別養護老人ホームに入っていて、母が亡くなった後は、私が叔母の世話をしています。
 この先叔母が亡くなったとき、叔母が亡母のために残してくれた遺言はどうなるのでしょうか。


A.叔母の遺言は無効となる?

 

叔母が残した遺言は、受遺者(遺言によって遺産を譲り受ける人)である母が遺言者(叔母)よりも先に亡くなったことで効力を失います(民法994条1項)。遺言者は、通常自分の財産を特定の受遺者に譲り渡すために遺言を作成していますので、その受遺者が自分より先に亡くなってしまったら遺贈の目的を果たせないと考えるのが通常だからです。


 ただ、遺言に、母が先に亡くなったときは、その相続人である質問者や弟さんに遺贈する、という一文が入っていれば、叔母が亡くなった後、質問者と弟さんが叔母の遺産を譲り受けることができます。

 

叔母が亡くなったら遺産はどうなるの? 

 

 遺言が効力を失った場合、叔母の遺産はどうなるのでしょうか。
 

 叔母は独身で子供もいないとのことですので、親(質問者にとっての祖父母)も既に亡くなっていれば、叔母の兄妹が相続権を有することになります。母は叔母よりも先に亡くなっていますので、母が相続するはずであった相続分は、母に代わって質問者と弟さんが代襲相続することになります(民法889条2項)。
その場合の相続分は、叔父が健在であれば、叔父が2分の1、質問者と弟さんが各4分の1ずつです。

 

生前の貢献は寄与分で調整!

 

 なお、質問者はもちろん、質問者の母も、長年にわたり叔母の療養看護に尽くしてきていますので、それが叔母の財産の維持と増殖に特に貢献したと見られる場合は、その貢献度に応じて、遺産から貢献分(寄与分)を先に取得し、残りを法定相続分に応じて分割をするという遺産分割方法を求めることが可能です。

 


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2015.07.10更新

Q.最近、年をとったせいか、自分が死んだ後のことを考えるようになりました。大した財産があるわけではありませんが、私が死んだ後、わずかな遺産をめぐって家族が争うようなことがないようにしたいと思っています。遺言には、自筆証書遺言というものがあると聞きました。具体的にどのように作成すればよいのでしょうか。


A.自筆証書遺言は便利だけれども厳しい要件が!

 

 自筆証書遺言は、遺言者が遺言の内容全部を自分で筆記し、日付及び氏名を自書し、最後に押印することによって作成します。書き損じた場合は、元の記載内容が分かるように訂正あるいは変更をして変更場所に押印し、欄外に訂正をしたことを付記して署名する必要があります(民法968条)。


 遺言は、効力が発生した時点で遺言者が死亡していますので、後で遺言者の意思を確認することができません。そのため、遺言者の最終意思である遺言の内容が正確に書面に表され、内容が実現されるように、民法では遺言は法律の定める方式によらなければ効力を生じないとされています。したがって、たとえ故人の意思が表れていたとしても、単なるメモや録音、日記などでは遺言としての法的効力は認められません。

 

 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、緊急の場合の特別方式の遺言があります。このうち、自筆証書遺言は、もっとも基本的な遺言の方式で、費用もかからず簡便に作成することができますので便利です。しかし、偽造や変造がされやすく、内容を秘匿できないなどのデメリットがあります。また、公正証書遺言と違って、遺言の保管者は、相続の発生を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言を提出して検認を請求しなければなりません。相続人が遺言を発見した場合も同様です(民法1004条)。

 

自筆証書遺言を作成するポイント

 

 ところで、自筆証書遺言の作成にあたって留意すべき点は、次のとおりです。

 

①遺言の内容は、全文を手書きしなければなりません。ワープロ打ちをしたもの、他人に口頭で告げて代筆してもらったもの、点字で記したもの、録音などは、いずれも無効です。内容は必ずしも日本語でなくても構いません。

 

②日付は、年月日まで正確に書く必要があります。「平成27年5月吉日」などと日付が特定できないものでは、遺言は無効となります。また、日付は遺言を完成させた日を正確に書く必要があります。日付は、遺言をした時点の遺言者に遺言能力があったこと、遺言の撤回の有無、効力を判断するために重要な意味を持ちますので、実際の日付と違うものは無効になります。

 

③氏名は、通称名やペンネームでも構いませんが、遺言者本人が書いたことが分かるように自書でなければなりません。字がうまく書けない遺言者のために、他人が手を支えて筆記を助けることは許されますが、代書することはできません。

 

④印は、認印でも構いません。

 

⑤遺言の本文の記載を間違えた場合は、民法に定める方法で訂正しなければなりません。具体的には、元の記載内容が分かるように訂正あるいは変更をして該当場所に押印し、欄外に訂正をしたことを付記して署名する必要があります。

 後で訂正の効力が争われないためにも、訂正が必要となった場合は書き直したほうがよいでしょう。

 

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2015.07.04更新

Q.私は夫と20年来の内縁関係にありました。先日、夫が亡くなり、大家さんにそのことを伝えたところ、夫には収入があったので建物を貸していたが、私には収入がないので出て行って欲しいと言われてしまいました。私は、出て行かなければならないのでしょうか。私は無職ですが、夫の加入していた厚生年金から遺族年金がおりる予定で、家賃は今までどおり支払っていけそうです。なお、夫は再婚ですが、前妻との間に子供がいるかどうかは分かりません。

 

A.家賃を払い続けて住み続けることが可能!

 

 亡くなった夫と前妻との間に子供がいるかどうかにかかわらず、質問者は大家(賃貸人)に対し、居住の権利を主張することが可能ですので、このまま家賃を支払いながら住み続けることが可能です。大家が家賃を受け取らない場合には、法務局に家賃を供託することも可能です。

 

 夫婦には、いろいろな事情から籍を入れずに生活する方が大勢います。そのような方々(内縁の夫婦)も、夫婦である以上、法律上できるだけ入籍をした正式な夫婦と同様に取り扱うことが望ましいと考えられており、法律や判例もこれに沿った考え方がとられています。

 しかし、内縁の配偶者には相続権がありませんので、賃貸借の契約者である他方が亡くなっても、当然にはその地位を引き継ぐことはできません。

 

内縁の夫に相続人がいてもいなくても居住の権利を主張できる!

 

 そこで、法律及び判例は、内縁の夫婦の一方がその名で借りた住居に夫婦が居住してきた場合に、名義人が亡くなっても残された配偶者が安心して暮らしていけるよう内縁配偶者に一定の権利を認めています。

 

 一つは、借地借家法の規定で、居住用建物の賃借人が相続人なしに亡くなった場合、その当時婚姻の届出をしていなかったけれども、賃借人と事実上夫婦と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者が建物の賃借人の権利義務を承継する、と定めています(民法第36条)。
 ですから、夫に相続人である子や親兄妹がいなければ、質問者は当然に夫の賃借人としての地位を引き継ぐことができます。

 

 もう一つは、判例で、建物の賃借人が亡くなった場合、残された内縁配偶者は、亡くなった配偶者の相続人が承継をした賃借人の地位を援用して、賃貸人に居住の権利を主張できる、としています(最高裁判昭和42年2月21日判決)。

 

 この場合、相続人が家賃を支払わない場合は、賃貸人から契約を解除されるおそれがありますので、残された内縁配偶者は、契約を解除されないため、利害関係人として賃貸人に家賃の立替払いをすることが必要となってきます。

 

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2015.06.22更新

Q.父母は私が小学生のときに離婚し、兄妹は3人とも父に引き取られました。兄と妹は結婚後家を出て、私が父と二人で暮らしてきましたが、5年前に父が亡くなりました。その後、特に遺産分割の話し合いもせず放置していたのですが、最近実家の土地建物の登記簿謄本を取ってみたところ、相続を原因として兄妹3人の共有持分登記がされていました。私は次女ですが、印鑑を押した記憶はありません。これから兄妹と遺産分割の話し合いを進めて行こうと思いますが、実家の土地建物を私の名義にすることはできるのでしょうか。

 

A.単独名義とするには遺産分割協議が必要

 

 兄妹三人が相続人となりますので、三人で話し合って合意できれば、質問者が実家の土地建物を相続することとして登記も質問者の名義に変えることは可能です。

 

 兄妹三人の共有登記となっていたのは、おそらく他の兄妹のいずれかが「相続」を原因とする各自の相続分に応じた共有持分登記を申請したのでしょう。亡くなった父名義の土地建物は、相続と同時に法律上当然に相続人である兄妹3人による遺産共有状態(一般的な共有関係とは異なり、遺産分割が成立するまでの暫定的な権利状態)になりますので、相続人であれば誰でも単独で、相続分に応じた登記を申請することが可能です。

 

 この登記は暫定的なものですので、兄妹間で遺産分轄の協議が成立すれば、その協議結果に基づき名義を変更することが可能です。遺産分割協議書は、登記をする原因となる文書(登記原因証書)として登記申請に添付しますので、相続人は実印をもって押印し、印鑑証明書を用意しなければなりません。

 

他の兄妹を説得するだけの理由が必要!

 

 なお、実家の土地建物を質問者が単独で相続するためには、他の兄妹の理解を得る必要があります。他に父から引き継ぐ遺産がないのに質問者が土地建物全部を取得することに他の兄妹が同意するためにはそれなりの理由が必要でしょう。他の兄妹が生前父から多額の援助を受けていたとか、質問者による特別の貢献により父の遺産の維持増殖がはかれたとか、質問者が土地建物を全部取得する代わりに質問者が他の兄妹に代償金を支払うなどしなければならないことが多いです。

 

 どうしても分割協議がうまく進まない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、第三者である調停委員に間に入ってもらって冷静な話し合いをすることを検討してください。

 

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2015.05.23更新

Q.先月、父が亡くなりました。私には姉と兄がいますが、父は生前私が独身で不憫に思ったのか、遺産を全て私に譲るという遺言を書いてくれて、私に預けました。遺言書は封筒に入れて保管していますが、今後どうすればよいでしょうか。


A.自筆証書遺言の保管者は開封前に家庭裁判所で検認手続を!

 

 遺言は、自筆証書遺言のようですから、保管者である質問者は父が亡くなった後、遅滞なく、遺言書を父の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出して、検認の審判を申し立てなければなりません。

 遺言書が封書におさめられ封印されている場合は、家庭裁判所で相続人やその代理人の立会いがなければ、開封することができないことになっています。

 遺言書の検認手続をせずに遺言を執行したり、封印されている遺言書を家庭裁判所外で開封したりすると、5万円以下の過料の制裁を課せられることがあります。

 

遺言書の存在を隠して相続手続を進めると相続人の資格を失うことも!

 

 検認の審判は、相続人に対して遺言書の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状、訂正の有無・方法、日付、署名の仕方、保管方法など、検認の日における遺言書の内容を明らかにすることにより、遺言書の現状を記録にとどめ、遺言書の偽造や変造を防止するための手続です。

 

 検認は、遺言書の現状を保存するための手続ですので、検認がなされたかどうかは遺言書の効力には影響しません。検認をしたからと言って無効な遺言書が有効になることはありませんし、逆に、検認がされなかったからと言って有効な遺言書が無効となるわけでもありません。

 

 なお、遺言書の存在の知りながら検認をせず、しかも他の相続人にも遺言の存在を隠して遺産分割協議を進めた場合には、遺言を隠匿したものと見られて、相続人の資格を失うことがありますので注意が必要です。

 

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2015.05.20更新

Q.私は姉と二人姉妹で、姉は嫁ぎ、私は独身です。母は3年前に亡くなり、私は父と二人で暮らしてきました。父が2年前に脳梗塞で倒れて車椅子生活をするようになってからは私が父の介護を続けてきました。
 父も私の将来のことを心配し、父の財産を全て私に譲ってくれると言って、公正証書遺言を作成してくれました。
 ところが、姉が父から自宅の権利証を渡され、持ち出してしまいました。私は、姉に対して何か言えることはあるのでしょうか。

 

A.父の本心を確認しなければなりません

 

 まず、父が姉に自宅の権利証を渡した本心を確認しなければなりません。単に預けただけなのか、姉が父を惑わしたり、騙したりして父の意思に反して権利証を持ち出したのか、自宅を姉に譲ろうとしたのか、いろいろな事情が考えられます。

 

 父が姉に権利証を預けたのであれば、なんのために預けたのかを父に確認してもよいでしょう。
 父は健在ですから、たとえ父が質問者のために遺言を残してくれていたとしても、亡くなるまでは、自宅は父の財産ですから質問者が父の意思に干渉することはできません。

 しかし、父は脳梗塞で倒れて自由がきかない状態で、しかも高齢であるとすれば、預けることの意味を本当に理解しているとは限りません。物事を理解し、判断する能力に衰えが見られるなら家庭裁判所で成年後見人を選任することも検討しなければなりません。

 仮に、父が姉に権利証を預けた理由がはっきりしているなら、父の意思が正しく実現されるよう、介護する妹として姉の行動に目を光らしておく必要があるでしょう。

 

成年後見人の選任を検討する

 

 次に、姉が父の意思に反して権利証を持ち出したのであれば、父のために権利証を返還するように姉に要求すべきです。これは、法的な要求ということではありませんが、父の意思に反して大事な権利証を持ち出すこと自体、穏やかではありませんから、姉妹として当然要求すべきでしょう。先ほどと同様に、父の判断能力が不十分になっているなら成年後見人を選任し、後見人から姉に対して返還を求めるべきです。 

 権利証だけで自宅を無断で処分できるわけではありませんが、実印や印鑑カードまで渡しているようなら悪用の危険がありますので、念のために改印手続をしておいたほうがよいでしょう。

 

父の本心なら尊重されるべき!

 

 以上に対し、父が本心から姉に自宅を贈与したり、売却したりするつもりで権利証を渡したとすれば、それは父の意思ですから質問者がとやかく干渉できることではありません。

 質問者にしてみれば、父の介護をして、父からも財産を全部あげると遺言まで残して貰っていますので、姉に対して不満を抱くのは無理もありませんが、父が遺言に反する生前処分をしたとすれば、その部分について遺言は撤回されたことになりますので(民法1023条2項)、遺言を理由に文句を言うこともできないでしょう。

 


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2015.05.17更新

Q.公正証書遺言を作成するメリットと作成方法を教えてください。

 

A.公正証書遺言は信用できる公文書!

 

 公正証書遺言は、公証役場で遺言者が公証人の面前で遺言の趣旨を口授(口頭で趣旨を伝えることです)し、公証人が遺言者から聞いた内容を書き記して、遺言者と出頭した証人二人に読み聞かせ、内容に間違いがないことを確認したら遺言者及び証人二人がそれぞれ署名捺印をし、最後に公証人が署名捺印をして出来上がります。

 

 公正証書遺言は、公証人という公務員が職務上作成する公文書ですので、内容が改ざんされたり不明確のため後日争いになったりする心配がありません。遺言者の遺言能力や遺言の意思に問題があると争われることも少ないです。

 

全国どこの公証役場からも遺言の存否を確認できる! 

 

 また、遺言が公証役場に保管され、全国どこの公証役場からでも遺言の有無、保管場所を検索できますので、遺言の控えが紛失したとしても保管場所で写しの交付を受けて内容を確認することができます。


 このほか、筆談や手話通訳でも遺言を作成できますので、口のきけない人や字の書けない人でも作成できますし、他の遺言のように遺言者の死後、家庭裁判所で検認を受ける必要もありません。

 

 他方、要件を満たす証人が二人必要となることと、費用がかかることが多少難点です。ただ、上記メリットを考えると、遺言は公正証書遺言にしておくことが確実です。」

 

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2015.05.11更新

Q.私は既に70歳を超え、昨年大きな病もしましたので、最近は自分が死んだ後のことを考えるようになりました。資産は自宅の土地建物と多少の預金、上場株式、ゴルフ会員権などがあります。家族は、妻と子供二人です。子供はいずれも独立しています。うち一人は私が大病をしたときに介護をしてくれて老齢の妻も私も大変助かりました。多少遺産を多く残してあげたいと思いますが、どのような遺言を残せばよいでしょうか。

 

A.相続する遺産の割合を指定するか、個々の財産の取得者を決めるかの違い!

 

 方法としては、遺産を多く残したい子に本来の法定相続分(4分の1)より大きめの相続分(例えば3分の1)を指定して、妻ともう一人の子で残りの相続分(例えば3分の2)を分け合うようにするか(相続分の指定、民法902条)、個々の財産を特定してそれぞれ相続させたい者に「相続させる」旨を定める方法(遺産分割方法の指定、例えば妻に土地建物を、多く残したい子に残高の大きい預金や評価額の高い上場株式を、残りをもう一人の子に相続させるなどです。民法908条)が考えられます。

 

相続分の指定の場合は改めて遺産分割協議が必要となる! 

 

 前者の場合は、相続分(相続割合)を指定するだけですので、改めて遺産分割協議が必要となります。後者の場合は、遺産を漏らさず特定して、それぞれについて誰に「相続させる」かを定めておけば、改めて遺産分割協議を経ることなく当然に各相続人が遺言で定めたとおり遺産を取得することができます。特に、不動産の場合は、遺言を登記原因証書として、単独で相続による取得の登記をすることが可能です。

 

 このほか、バリエーションとして、遺産を全て売却換価して、相続人ごとに取得割合を決めて換価代金を配分する、土地建物を老齢の妻に残し、残りを、取得する遺産を特定して子二人に相続させるようにし、万が一過不足が生じる場合は妻が代償金として子らに一定の現金を交付する、などの方法も考えられます。

 

遺留分を侵害しないように遺言を残す配慮を!

 

 なお、遺産を多く残したいと思うあまり、妻ともう一人の子に残す遺産が少なすぎると、遺留分を侵害されたとして、後日、多く相続した子が、妻ともう一人の子から遺留分相当額の返還を求められることがあります(遺留分減殺請求、民法1031条)。


 ご質問のケースでは、妻には所定の方法で計算した遺産総額のうち4分の1の、子には8分の1の遺留分が保障されていますので、これらの割合を下回らないように、うまく相続分の指定や遺産分割方法の指定を行う必要があります。

 

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2015.05.05更新

Q.ここ3カ月の間に父方の祖母と父が相次いで亡くなりました。父は、祖母の葬儀の後、気落ちしていたときに事故に遭ってしまいました。父には自宅の土地建物と預貯金などそれなりの遺産がありますが、祖母にはアパート経営で作った多額の借金があり、できれば引き継ぎたくありません。父も生前、相続を放棄すると話していました。どうしたらよいでしょうか。

 

A.父の死を知ってから3か月以内なら祖母の相続を放棄できる!

 

 父がなくなった時点で、父の一切の財産関係は相続人である質問者が引き継ぎます。その時点で、父が有した母の相続放棄に関する選択権も引き継ぐことになります(これを再転相続といいます)。

 

 本件では、父が祖母の死去に伴う相続放棄を考えている途中で亡くなっていますので、父の相続放棄の申述期間(相続放棄ができる期間のことで、父が祖母の相続開始を知ったときから3カ月です)も引き継ぐように思えます。

 

 しかし、法律は、この場合の祖母の相続に関する父の相続放棄は、質問者が父の死去を知ったときから3カ月以内に家庭裁判所に申述をすればよいと定めています(民法916条)。

 

父が亡くなった時点で既に相続放棄ができなかった場合は?

 

 これに対し、父が祖母の死を知ったときから3カ月以内に相続放棄をしていなかったなど、父が祖母の遺産について相続放棄をする権利を失っていた場合には、もはや質問者が祖母の相続について相続放棄をすることはできません。
 この場合、質問者は、父の固有の遺産とともに、父が祖母から相続した借金も引き継がなければならなくなります。

 

 なお、祖母の相続放棄の手続をする裁判所は、祖母の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となりますので、父の最後の住所地の裁判所とは異なることがありますので、注意してください。

 

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