2015.04.29更新

Q.私の父は会社を経営していましたが昨年亡くなりました。会社には後継者がいて今のところ順調に事業をしていますが、父は生前会社のために銀行に保証をしていましたので、もし会社になにかあると相続人である私と兄、母に請求がくると聞きました。相続放棄も考えましたが、私は母と一緒に父名義の自宅に暮らしており、相続を放棄すると家を出なければなりません。どうすればよいでしょうか。

 

A.保証人を外してもらうには金融機関との交渉が必要!

 

 まず考えられることは、現時点で会社の業績に問題がなく、金融機関への返済が順調に行われているなら、金融機関と交渉して、父の地位を承継する相続人各人の保証人の解除と後継者への変更を申し入れることです。相続人が誰一人として会社の経営に関与していないのであれば、むしろ保証人になっていること自体が不自然ですので、金融機関も相談に応じてくれると思います。

 

 ただし、父名義の自宅には金融機関の担保が設定されている可能性がありますし、仮に設定されていなくても、保証人を外す代りに自宅への担保設定を求められる可能性があります。また、父が所有する株式も相続することになるでしょうから、株式も担保に入れることを求められる可能性があります。

 

 保証人も担保も外してもらうためには、経営を引き継ぐ後継者に保証人を代わってもらい、新たな担保を金融機関に差し入れてもらって自宅の担保を外してもらうよう交渉する必要があります。その場合、父から引き継いだ株式を後継者に譲渡するなどの条件案を提示することも考えなければならないでしょう。

 

金融機関が保証の解除に応じないなら保全措置を!

 

 上記が難しいなら、リスクを抑えるために、ひとまず母のみが相続を承認し、質問者と兄は相続を放棄し、時間をかけて保証人変更の交渉を続けることもやむを得ないでしょう。

 保証だけなら、会社の業績が今後も順調で、借入金の返済が進めば、そのうち保証した借入金が完済となり、保証が効力を失うこともあります(不特定の借金等を保証する根保証でも時期が来れば元本が確定し、通常の保証と同様借金が完済されれば効力を失います。)。

 

 保証人も変わってもらえず、担保も外れないとなると、業績が今後も維持されるよう、相続人のどなたかが大株主として会社に役員として入り、経営を監視して業績の推移を見守ることも考える必要があります。

 

 また、仮に将来会社の業績が悪くなって保証人として責任を追及されたり、担保に入っている自宅を競売に付されたりした場合に備え、会社に対する求償権を保全するため会社に担保を設定してもらうことを要求すべきでしょう。

 

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投稿者: 弁護士好川久治

2015.04.23更新

Q. 先日、夫が事故で亡くなりました。私と夫は、訳があって籍を入れていませんでした。しかし、私は夫の社会保険の被扶養者になっていましたし、世間的にも夫婦として生活してきました。突然の夫の死により、私は、今後の生活が不安で仕方がありません。 
 先日、加害者の保険会社から連絡があり、夫には前妻との間に子供が1人いるので、その子供と示談交渉することになります、と言われました。私は加害者から夫の損害の補償を受けられないのでしょうか。

 

A.内縁配偶者も法律的に夫婦と同じ扱いを受けることがある!

 

 内縁配偶者であっても、夫が亡くなったことによる精神的損害(慰謝料)や夫が生きていれば夫の収入から扶養を受けられたと見込まれる扶養利益の損害賠償を求めることができます。

 

 質問者と夫は、入籍をしていないものの、社会的には夫婦としての実態があったようですから、いわゆる「内縁」関係があったと言えます。夫婦には、いろいろな事情から入籍をしないで生活をしている方が多くいます。しかし、内縁も「夫婦」であることに変わりありませんから、同居義務、お互いに協力して生活を支える義務、生活費を負担すべき義務、貞操義務など法律婚と同様の取扱いがされます。


 一方、内縁はあくまでも事実上の夫婦関係ですから、氏を同じくする義務、お互いの親族との間の姻族関係、未成年者を成年とみなす成年擬制などの適用がないほか、相続権もありません。
 したがって、いずれかが交通事故で死亡した場合も、正式な夫婦であれば相続できるはずの加害者に対する損害賠償請求権を主張できません。

 

 しかし、これでは夫婦同然に生活をしていた内縁の配偶者に酷ですし、亡くなった配偶者と生活を共にしない法律上の相続人だけが権利を主張できることになって不合理です。

 

固有の慰謝料と、内縁の夫から扶養を受けられた利益について賠償請求が可能!

 

 そこで、先例では、内縁配偶者であっても、交通事故の加害者に対し、固有の権利として慰謝料と独自の扶養利益侵害を理由とする損害賠償請求を認めるケースがあります。

 

 慰謝料については、民法711条の近親者の固有の慰謝料請求権の規定を類推適用して、内縁配偶者に慰謝料請求を認める先例があります(東京地裁18年2月7日判決、大阪地裁21年9月30日判決など)。金額は、事案によって様々で、200万円程度のものもあれば、1000万円の慰謝料を認めた事例もあります。

 

 扶養利益侵害を理由とする損害賠償請求は、配偶者が生きていれば配偶者の収入によって扶養を受けられた見込みをもとに請求できる権利です。
 これは、交通事故で死亡したことによって被害者自身が失った将来の収入の喪失による損害(逸失利益)と同じではありません。どのくらいの金額になるかは、「個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定」すべきものとされています(最高裁平成12年9月7日判決)。

 

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2015.04.20更新

Q. 先月夫が亡くなりました。私には小学生の子供二人がいます。銀行に亡夫の預金の払戻しをお願いしたところ、子供二人について家庭裁判所で特別代理人を選任してください、と言われました。私が子供二人を代表して預金の払戻しをすることはできないのでしょうか。亡夫名義のマンションもあるのですが、妻である私に名義変更をすることはできないのでしょうか。


A.家庭裁判所で特別代理人を選任する!

 

 法的な理屈はともかく、現在の銀行の相続預金の実務によれば、相続預金の払い出しのためには家庭裁判所でお子さん二人について特別代理人を選任するのが簡単ではないかと思います。夫名義のマンションについて、持分全部を質問者の名義にするためには、同じく家庭裁判所で特別代理人を選任し、質問者がマンションの持分全部を取得する見返りにお子さん二人に対し、相続分に相当する代償金を支払う内容の遺産分割協議書を作成する必要があるでしょう。

 

預貯金の払出しにも事実上特別代理人の選任が必要となる

 

 まず、相続預金について、銀行の普通預金、ゆうちょ銀行の通常貯金は、お金を請求する権利(金銭債権)ですので、相続により当然に分割承継され、各相続人は自分の相続分に見合う金額について銀行に対し払戻しを請求できるとされています(最高裁昭和29年4月8日判決ほか)。銀行の定期預金についても争いはありますが、同様に当然分割を認める考えが有力です。逆に、ゆうちょ銀行の定額貯金については当然分割を認めない考えが有力です。

 

 しかし、銀行実務では、一部の銀行を除いて、当然分割を前提とした相続人からの払戻しには応じてくれません。相続人間の争いに巻き込まれたくないというのが理由のようです。そのため、銀行実務では、相続人全員の同意を得て代表者を選任し、その代表者が払戻しをするか、相続人全員が署名捺印をした遺産分割協議書を提出する必要があります。

 

 質問者のケースのように、相続人のなかに未成年者がいる場合、親権者で相続人でもある親と子がともに相続人として遺産分割協議書に署名捺印をしなければなりません。

 

 しかし、親は子の親権者として子のために分割協議をする義務を負う一方、相続人としての立場でも協議に参加するという相矛盾する立場に立つことになります。

 

 このような場合は、親は子を代表する権限がなく、親権者である親は家庭裁判所に子のために特別代理人を選任して子のために遺産分割協議をしてもらう必要があります(民法826条)。子が二人いれば、二人とも特別代理人を選任しなければなりません。

 

 特別代理人を申請するには、特別代理人の候補者(親戚の方でも構いません。)を指定して遺産分割協議書の案を添えて家庭裁判所に申請します。
 

マンションを単独名義にするなら代償金の支払が必要!

 

 夫名義のマンションの名義変更をする場合も同じで、各人が相続分に応じて相続登記をする場合を除き、親権者である質問者は子二人のために家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。

 

 特別代理人は、子のために子の利益となるように遺産分割協議をしなければなりません。家庭裁判所の実務では、特別代理人の申請の際、予め遺産分割協議書の案を提出し、その内容が子の利益に反しないかどうかを審査するようにしています。

 ですから、申請にあたって提出する遺産分割協議書の案は、子の相続分を侵害しないものとしなければなりません。亡くなった夫のマンションを全て質問者の名義にするなら、子に不利益とならないよう、質問者から子に対し、子の相続分に相当する代償金を支払う内容としなければなりません。

 

 このように、手続的には多少やっかいで融通が利きませんので、子が成人に近い場合は、子が成人になるのを待って遺産分割協議をするのがよい場合もあるでしょう。

 

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2015.04.17更新

Q.私は三人兄妹で、父は既に他界しています。父は6人兄妹で、父を含め3名は既に他界しています。このたび父の姉妹の一人である叔母が亡くなりました。叔母は生涯独身で子供はいません。祖父母は既に他界しています。遺産は叔母が住んでいた一軒家と預貯金です。相続人は、未だ健在の叔父と叔母をはじめ、既に亡くなっている叔父、叔母、父のそれぞれの代襲相続人である子供らで、全部で10名になります。
 相続人間で特に遺産分けについて争いはなく、不動産については売却し、払戻しを受けた預貯金を合わせて、各相続人間で相続分に応じて分配することで合意しています。人数も多いので、どのように進めればよいでしょうか。


A.遺産を単独相続して代償金を支払う方法が便利

 

 相続人の中から、どなたか代表の方を選んでその方が全ての遺産を相続することとし、他の方は相続分に応じた代償金を受け取る内容の遺産分割協議書を作成することが考えられます。そのうえで、遺産を相続した方が預金を解約し、また不動産の売却手続を進めて、払戻金と売却代金を他の相続人に支払うのがスムーズでしょう。

 

多数の相続人が一同に会して分割協議をするのは大変

 

 遺産分割は、相続人の協議により遺産の分割方法を決める手続です。通常は、妻と子、妻と親、妻と兄妹といった比較的近しい限られた関係者の間での話し合いが行われますが、まれに妻子がなく、兄妹も既に亡くなっていて、その代襲者である多数の甥や姪が相続人として遺産分割協議をしなければならないことがあります。
 

 質問者のケースも相続人が10名にのぼりますので、一堂に会して協議することは簡単ではありません。話し合いがまとまらなければ家庭裁判所の調停を申し立てて協議をしなければならない場合もあります。幸い質問者の場合は、分割方法について争いがありませんので、家庭裁判所のお世話になることはありませんが、それでも10名も相続人がいると、預金の払戻しや不動産の売却手続を進めることは容易ではありません。

 

信頼できる相続人が相続人全員の代表者として換金手続をして分配する方法がある

 

 そこで、遺産を特定の相続人が代表して相続し、他の相続人には相続分に相当する代償金を支払う方法で分割協議を成立させることがあります。
 このようにすれば、預金の払戻しは単独でできますし、不動産の売却も比較的自由に買主を探して売却することができます。
もちろん、相続人を代表して手続を進めることになりますので、相続人から信頼を得られる人を選ぶ必要があります。


 一部の相続人が単独取得することに抵抗がある場合は、遺産は相続分に応じて各自が取得することとし、預金の払戻しや不動産の売却手続のために便宜的に代表者の単独名義として払戻しと売却を実施し、他の相続人に現金を分配する、という内容の遺産分割協議をすることもあります。

 

 なお、名義人になった者、代償金の分配を受けた者のいずれも相続税の申告が必要な場合があります。また、不動産を売却した場合も、譲渡所得税の申告が必要となる場合がありますので、こちらも注意しておく必要があります。

 

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2015.04.14更新

Q.昨年暮れに父が亡くなりました。母は10年前に亡くなっていますので相続人は姉妹三人です。私は次女で三女とともに既に嫁いでいます。長女は独身で父と一緒に暮らしていました。四十九日が終わり、そろそろ遺産分割協議を始めようと父の遺産を調べたところ、姉が、父の預金を全て引き出してしまっていました。そればかりか、父と一緒に暮らしていた父名義の土地建物を不動産業者に売却してしまっていました。私と三女はどうすればよいでしょうか。

 

A.まず前提として、姉が預金を引き出し、土地建物を売却した時期が問題となります。


(1)父が亡くなる前
 姉が預金を引き出し、土地建物を売却したことについて父の承諾を得ていたかどうかが問題となります。
 いずれも父の承諾を得ていた場合には、姉の行為に何ら問題はありませんので、あとは引き出した預金や土地建物の売却代金がどこに行ってしまったのかが問題となります。
 父のために使われたのか、父が姉に贈与したのか、姉が父に無断で個人的に使ってしまったのか、姉が隠しているのか等、具体的事情によって対応が変わってきます。

 

 1)父のために使われたものなら父の意思には反しないでしょうから、残った遺産の所在を確認し、姉妹で分割の協議をすればよいでしょう。
 

 2)父が姉に生前贈与したものなら、あなたと三女は生前贈与によって遺留分を侵害された可能性がありますので、1年以内に姉に対して遺留分減殺請求をして、侵害された権利の回復を求めていくことになります。
 

 3)姉が無断でお金を使い込んでしまっていた場合は、不法行為ですから父は姉に対し損害賠償を求めることができますので、その権利を相続によってあなたと三女が相続し、各自の権利として姉に対して損害賠償を求めていくことになります。
 姉が父に無断で預金を引き出し、土地建物を売却した場合も、父の姉に対する損害賠償請求権を相続し、姉に対して損害賠償を求めていくことになります。

 

(2)父が亡くなった後
 父が亡くなった後は、遺産分割協議が終わるまで預金は凍結されますので、姉が預金を引き出したということは、預金が凍結される前に父の印鑑や通帳あるいはカードを使って預金を引き出したか、姉妹の印鑑を偽造して引き出したかのいずれかです。
 土地建物についても、亡くなった後は、相続人の実印や印鑑証明書を偽造したり、悪用したりしない限り売却することはできませんので、何らかの不正な方法で売却がされた可能性があります。

 

 1)まず、預金ですが、銀行に対しては、本来払い出しができないはずの預金を払い出したということで、銀行側に何らかの落ち度があれば、銀行に対して引き出された預金の返還を要求することが考えられます。

 しかし、通常は銀行も必要な手続を経て預金の払い出しに応じているでしょうから預金の払い出しの無効を主張していくことはかなり大変です。

 姉に対しては、他の相続人の承諾も得ずに預金に払い戻しをしていますので、相続分侵害の不法行為あるいは不当利得を理由に相続分に応じた預金の返還を要求していくことが可能です。もちろん姉のしている行為は犯罪です。

 

 2)次に土地建物ですが、仮に不正な手段で土地建物の名義が変えられていたとしても、そのような名義変更の登記は無効ですので、あなたと三女は、買受人に対して相続分に応じた持分の名義変更を要求することが可能です。この場合、買受人とあなたと三女の三人の共有関係が復活することになります。

 買受人としては騙されたようなものですから購入契約を解除して元どおり姉妹の共有関係に戻すと言い出す可能性もありますが、仮に共有関係が続くようなら買受人との間で分割協議をしなければならなくなります。

 いずれにしても姉の不法行為によって起こったことですから、姉に対しては発生した損害の賠償を求めていくことが可能です。

 

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2015.04.11更新

Q.私の夫は、農家の三男坊で高校を卒業してから家業の農家を手伝ってきました。私が夫に嫁いだ後は私と夫が二人三脚で高齢の義父に代わって農作業に従事してきました。
 ところが、昨年義父が亡くなり、四十九日の法要の後、夫の兄二人が遺産分割の話しを始め、義父の農地や預貯金など財産は全て法定相続分に応じて分割するように言ってきました。義兄二人の言うとおり遺産を分割すると農地を手放さなければなりません。また、私と夫が30年以上、手弁当で義父の農業を手伝ってきたことが正当に評価されていないようでなりません。私には何か主張できることはないのでしょうか。


A.家業への貢献は寄与分で考慮する!

 

 夫が30年以上にわたって手弁当で家業の農業を手伝ってきたことは、相続人間の遺産分割協議において、義父の遺産の維持増殖に特別の寄与をしたものとして、寄与分に相当する金額の先取りを主張することが可能です。ただし、寄与分を主張できるのは相続人だけですので、妻であるあなた自身が自らの貢献を主張して遺産の受取りを主張することはできません。あなたの貢献は夫の貢献として考慮していくことになります。

 

特別の寄与とは?

 

 そもそも、義父の遺産を維持できたのは、30年以上にわたってあなたとあなたの夫が家業の農業を手伝ってきたことが大きく貢献していることは明らかです。その貢献を無視して、遺産を単純に法定相続分で分割するとすれば、あなた方夫婦の夫の遺産の維持増殖への貢献が正当に評価されず不公平です。

 

 民法は、このような不公平を解消するため、共同相続人の中に、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」があるときは、相続財産の中から共同相続人の協議で定めた寄与分を控除したものを相続財産とみなし、これを法定相続分に応じて分割し、最後に寄与分を加えて寄与者の具体的相続分を計算すると定めています(民法904条の2①)。

 

 民法が寄与分を認めるのは「特別の寄与」に対してです。特別の寄与が認められるためには、親子等の身分関係上、当然に期待される程度の貢献だけでは足りず、無償ないし無償に近い報酬で、かつ相当長期間にわたり、被相続人の事業に専念し、その結果、被相続人の財産の維持増殖に現実に貢献した事実がなければなりません。

 本件は、手弁当で30年もの間、家業の農業に従事してきたというのですから、特別の寄与が認められるケースでしょう。

 

相続人の協議が整わない場合は家庭裁判所で遺産分割の調停を! 

 

 具体的にどの程度の遺産の先取りが認められるかはケースバイケースで非常に難しいところですが、一般的には遺産総額の1~3割程度の寄与分認定が多いと言われています。

 

 寄与分は、基本的に遺産分割協議時の相続人間の話し合いで決めます。話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に申し立てられた遺産分割の調停のなかで話し合われ、最終的には家庭裁判所の審判において、裁判所が「寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮」して合理的な裁量により決定することになります。

 

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2015.04.08更新

Q. 昨年私の父が亡くなり、現在遺産分割の話し合いを勧めています。相続人は母と私、兄と妹の4名です。遺産は自宅の土地建物が2600万円、現預金が1000万円です。兄は、遺産3600万円を法定相続分に応じて分割し、土地と建物は母が亡くなるまで4人で共有にしようと言っています。
 しかし、兄は20年前に結婚したとき自宅の建築資金1000万円を父から援助してもらっています。また、妹は、25年前に結婚する際、600万円を持参金として持たせてもらっています。私は高校卒業後すぐに働きましたので、父から援助を受けた記憶がありません。私からは何も言えないのでしょうか。


A.相続人間の公平は特別受益の持ち戻しで!

 

 兄と妹が亡父から受けた生前の援助は、遺産分割にあたり「特別受益」として考慮することが可能です。

 

 具体的には、兄と妹が生前に援助を受けた金額を相続開始時点の評価で見直し、それを計算上一旦遺産に持ち戻して遺産総額を算出し、改めて法定相続分に応じて計算した各自の相続分から、兄と妹については、既に援助を受けた金額を控除して、最終的な具体的相続分を計算することになります。

 

具体的相続分の算出方法

 

 上記例では、相続開始時点で存在した遺産の合計は、土地建物の評価額2600万円と現預金1000万円の合計3600万円です。
 これに兄が20年前に自宅の建築資金として援助を受けた1000万円の相続開始時点の評価額(これを例えば1100万円とします。)と、妹が25年前に持参金として援助を受けた600万円の相続開始時点の評価額(これを例えば700万円とします。)をそれぞれ加算します。
 すると、持ち戻し後の遺産総額は、3600万円+1100万円+700万円=5400万円となります。

 

 次に、これを法定相続分に応じて、母、兄、質問者、妹に割り振ると、母2700万円(2分の1)、兄、質問者、妹がそれぞれ900万円ずつ(6分の1ずつ)となります。
 そして、兄は生前1100万円の援助を受けていますので、900万円-1100万円=▲200万円、妹は生前700万円の援助を受けていますので900万円-700万円=200万円となります。

 

 このとき兄の具体的相続分がマイナスになりますが、マイナス分まで返還する必要はありませんので、兄の具体的相続分はゼロとなります。

 

もらい過ぎはどうやって清算するの?

 

 兄のマイナス分200万円を他の相続人間でどう割り振るかについては争いがあり、上記例でいうと具体的相続分である母2700万円、質問者900万円、妹200万円の割合に応じて負担すべきとする考え方(具体的相続分基準説)と単に法定相続分の割合に応じて負担すべきとする考え方(法定相続分基準説、上記例では母2分の1、質問者と妹6分の1ずつの割合)があり、実務でも考え方が分かれています。

 

 このようにして計算された具体的相続分を基準として、相続人間で遺産分割協議を進めていくことになります。

 

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2015.04.05更新

Q.先月夫が亡くなりました。夫は再婚で私との間に子供はいません。先日夫の勤め先から退職金が支払われると連絡がありました。ところが、夫の先妻との間には子供が一人いて、その方から退職金については自分にも権利があるので、受け取った退職金の半分を渡してほしいと要求がありました。会社は、妻である私に退職金を支払うと連絡をしてきたのですが、先妻の子にも権利はあるのでしょうか。夫は、受取人を私として生命保険にも加入していましたが、この保険金も私が受け取ってよいのでしょうか。

 

A.死亡退職金も生命保険金も受取人の固有の権利になる!

 

 退職金も生命保険金も受取人として指定された者の固有の権利ですので、受取人として指定されていれば全額受け取っても問題ありません。

 

 死亡退職金や弔慰金は、従業員が死亡したときに遺族に支給されるもので、勤務先の退職金規程や弔慰金規程に定められています。勤務先の規程に基づく権利ですので、誰に受取りの権利があるのかも規程の定めによります。


 多くの場合、内縁配偶者を含む配偶者を第一順位の受取人と定めていることが多く、配偶者がないときは、生計同一の子、親、孫、祖父母などの順番で受取人となることが定められています。

 

受取人が誰であるかをよく確かめる

 

 本件の場合、勤務先から退職金が支払われると妻である質問者のところへ連絡があったというのですから、おそらく妻が第一順位の受取人と定められているのでしょう。


 間違いをなくすためにも、勤務先にお願いをして規程を見せてもらうなどして、よく確認してから受け取るようにしてください。

 

 他方、生命保険金の場合も、被保険者である夫が亡くなり、妻である質問者が受取人になっていますので、保険金は質問者の固有の権利として全額を受け取ることができます。

 

 生命保険金は、相続財産にも属しませんので遺産分割協議の対象からも外れます(相続税の計算上はみなし相続財産として課税対象となりますが一定の非課税枠があります)。

 

常識を超える生命保険金は特別受益になることもある!

 

 保険金の総額が遺産の総額に占める割合が著しく高いとか、遺産の多くを一時払い保険料として養老保険に加入し、他の相続人に遺産を残さないようにするなど、相続人間の公平が著しく損なわれる場合には、保険金を特別受益として遺産に一旦持ち戻し、法定相続分に応じて分割した後に受け取った保険金を控除するという調整をはかることもあります。

 

 しかし、常識的な金額であれば保険金は遺産とは別枠と考えてよいでしょう。

 

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