2015.06.28更新

Q.先日、10年以上前に住んでいた住所近くの銀行の担当者から実家に連絡があり、銀行のローンの支払がないので支払ってもらいたいと言ってきたそうです。
 確かに、銀行には預金口座を開設した記憶がありますが、ローンを組んだ記憶はありません。銀行の担当者は、その口座がクレジット会社の引き落とし口座になっていてクレジット会社から請求があったときに残高がなかったので立替をしたと話していたそうです。私は、銀行の担当者の請求に応じなければならないのでしょうか。


A.ローンの発生原因が適切かどうか確認する

 

 まずは銀行から取引の履歴を取り寄せてローンの発生原因を確認すべきでしょう。ローンの発生原因に間違いがなく、請求額も合っているなら、次に請求自体を争えるかどうかを検討します。

 

 銀行の担当者の話から考えると、ローンは、預金取引に付随して、一定の限度額まで銀行が自動貸出をする当座貸越契約に基づくものと思われます。
 残高がないときに、一定限度額まで貸出をしてくれる制度ですが、利息が発生すると、利息の返済日に預金残高がなければ利息分が自動的に貸し出され、それが積りに積もって、いずれ限度額を超えることがあります。

 

 銀行の当座貸越の規定では、貸越限度額を超えて自動貸出がされなくなると利息の返済が滞り、いずれ期限が到来するとしているものが多いです。
 そのため、限度額に達するまで銀行から連絡がないことが多く、銀行から返済の連絡があって初めてローンの存在に気づくことがあるわけです。

 

請求を争うことは一般的に難しい

 

 予想外のローンの請求で驚かれていると思いますが、それが銀行との正当な当座貸越契約に基づくものなら契約に基づく取扱いですので請求を争うことは難しいでしょう。
 また、期限は貸越限度額に達したときに到来しますので、消滅時効を主張することも難しいです。

 

 納得がいかないと思って支払わないでいると、全銀協の個人信用情報センターに事故情報として掲載され、借入ができなくなることもありますので、放置せずに返済方法を検討していく必要があるでしょう。

 

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2015.06.25更新

Q.公立中学校に通う1年の男子生徒の母親です。息子はこの4月から柔道部に入部しました。息子は体も同級生に比べて小柄で、柔道も初心者です。受け身も十分にマスターできていません。1週間ほど前、放課後に部活の練習をしていて、3年生の先輩から乱取りをされ、投げ飛ばされた拍子に頭と腕を打って、腕を骨折し、脳震盪を起こしました。
 幸い救急車が直ぐに来てくれて病院で検査をしましたが、今のところ異常はなく、しばらく定期的に通院をして様子をみることになりました。
 事故が起こったときに部活の顧問はおらず、生徒のみで練習をしていました。今後、息子にかかった治療費や障害が残ったときの責任は誰にとってもらえばよいのでしょうか。

 

A.市区町村または都道府県に対して国家賠償請求が可能!

 

 公立中学校のクラブ活動中の事故で、経験や技量に大きな差のある生徒間で柔道の乱取りが行われ、その場に顧問の担当教諭が立ち会っていなかったということですから、担当教諭の指導監督上の過失を理由に、学校設置者である市区町村、あるいは給与支払者である都道府県に対して、国家賠償法1条に基づく損害賠償請求をしていくことになるでしょう。また、乱取りをした3年生の児童生徒に対しても、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。

 

担当教諭には事故防止に対する重い責任がある!

 

 今回は、学校の教育活動の一環として行われるクラブ活動において発生した事故です。クラブ活動も教育活動の一環として主に学校の施設を利用して実施されるものですから、学校の管理下にあるといえます。

 

 特に、柔道のような激しい取組みが行われる危険なスポーツにおいては、毎年かなりの数の死傷事故が起こっており、クラブ活動を指導監督する顧問の教諭にも、事故の発生を未然に防止するために、児童生徒の発達段階と技量に応じた適切な指導監督が求められます。

 

 質問者のご子息は、未だ中学1年生で体格も小柄、また、クラブ活動を始めたばかりで、未だ十分な受け身もマスターできていないというのですから、そのご子息を相手に、体格も、経験も技量も違う先輩が乱取りをするというのは、かなり慎重でなければなりません。担当教諭としても、児童生徒の安全に配慮した指導監督を尽くすべきケースと言えます。

 

 確かに、クラブ活動は、学校の授業そのものとは違って、生徒の自主的な活動が尊重される場面ではありますが、それでも柔道の練習中の事故発生の危険性を考えると、中学生の児童生徒だけで乱取りの練習をさせた担当教諭は、過失を免れません。

 

 担当教諭の過失は、学校教育の職務遂行上のものですから、国家賠償法1条の公権力の行使にあたり、担当教諭が所属する学校の設置者である市区町村、さらには、教諭の給与を支給する都道府県もまた、国家賠償法1条に基づく責任を負うことになります。

 ただし、担当教諭は公務員ですから、担当教諭個人に対して不法行為責任を追及することはできません。

 

指導した先輩児童やその両親にも責任が発生することも!

 

 また、乱取りをした先輩の児童は、体格も技量も違う後輩に対し、激しい乱取りをした点で過失がありますので、民法709条に基づく損害賠償責任を免れません。

 先輩の児童の両親に対しては、当該児童が日頃から危険な指導をして、過去にも他人に怪我をさせたことがあるなど、事故発生を予見できる具体的事情があれば、その両親に対しても、民法709条に基づき監督責任を追及する余地があります。

 

 請求できる損害は、治療費、交通費、学校や病院への送り迎えに要した費用、入通院の慰謝料、後遺障害が残った場合の慰謝料、障害で失われた能力に応じた将来の逸失利益などになります。

 

 なお、本件は、学校管理下の事故ですから、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度により、所定の治療費と後遺障害に伴う損害(障害見舞金)の支給を受けられると思います。

 

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2015.06.19更新

Q.先日、夫が同じ社宅に住む同僚の奥さんと不倫をしていることに気づき、大変悩んでいたところ、社宅でいつも仲良くしている友人が声を掛けてくれて、いろいろ相談に乗ってくれました。不倫相手が同じ会社に勤める方で、同じ社宅に住んでいるということで、内密にお願いしていたところ、相談していた友人が同じグループの奥さん方に話してしまい、それが社宅中に知れ渡ってしまいました。夫と不倫相手の奥さんの家庭との関係は最悪で、私も夫から逆切れをされ、私が子供を連れて社宅を出ていくことになりました。内密にお願いしていたのに、他人に夫の不倫のことを話してしまった友人に、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

 

A.プライバシー権の侵害により損害賠償請求が可能!

 

 友人を信頼して個人のプライバシーにかかわる事柄を話し、それが広く外部に知れわたってしまったということですから、友人に対してはプライバシーの侵害を理由に慰謝料を請求することが可能です。但し、損害の範囲は、不倫相手の家庭との関係が悪化したこと、夫に逆切れをされ子供を連れて社宅を出なければならなくなったことそのものの損害ではなく、それらの事情を踏まえるもののプライバシーを侵害されたことによる精神的損害の範囲に限られます。

 

 夫の不倫は家庭内の秘密にかかわる事柄であり、それが外部に明らかにされることによって家庭の平和、引いては個人の生活の平穏を害されることになります。このような私生活上の秘密について、みだりに公表されない利益はプライバシー権として法的保護の対象とされます。

 

 プライバシー権を直接規定した法律はありませんが、私生活上の秘密は、封書を勝手に開封する信書開披の罪(刑法133条)、医師や弁護士などによる秘密漏示の罪(刑法134条1項)、住居等をのぞき見る罪(軽犯罪法1条23条)などの法律でも保護されています。

 先例でも、個人の尊重を定める憲法13条の幸福追求権を根拠に、私生活上の事柄をみだりに公表されない権利をプライバシー権として保障し、その侵害に対しては不法行為による損害賠償責任を負うと判断しています。

 

賠償の範囲は嫌な思いをした精神的損害に限られる

 

 質問者のケースでは、夫の不倫の事実は家族内のセンシティブな秘密にかかわる事柄であり、普通の人であればみだりに公表されることを嫌がるのが通常ですし、公表されることによって家庭の平和や生活の平穏が現実に害されていますので、不倫の事実を他人の話した友人の行為は、プライバシー権を侵害する不法行為として、損害賠償の対象となります。

 

 ただ、不倫相手の家庭との関係が悪化したことや、夫が逆切れをして社宅を出なければならなくなったことは、友人が不倫の事実を他人に話して噂が広がったことがきっかけになったとはいえ、これらはもともと夫の不倫が原因ですから、これらの不利益によって被った損害全部の賠償を求めることはできません。

 質問者としては、他人に私生活上の事柄を知られて嫌な思いをしたという精神的損害に限り、友人に対して損害賠償を請求していくことが可能です。

 

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2015.06.13更新

Q.昨日、小学生の子供が放課後に学校の校庭で友達とサッカーで遊んでいたとき、子供が蹴ったサッカーボールが友達の顔面を直撃し、怪我をさせてしまいました。学校の先生が救急車を呼んで友達は病院に運ばれましたが、顔を6針縫う怪我でした。母親の私は、子供を連れて直ぐに病院に行き、先方のご両親に謝罪をしました。先方のご両親は悪気があったわけではないから心配しないでいい、と言ってくれていますが、どうしたらよいでしょうか。

 

A.被害の軽減のための努力を怠らないことが大切!

 

 友達同士の遊びのなかでの不運な事故ではありますが、怪我をした方としては痛い思いをし、治療費や交通費、付添などで経済的な負担が発生していますので、加害児童側としては、被害児童の親御さんが心配しなくてもよいと言っていることに甘えることなく、定期的な見舞いと、経済的負担の軽減に向けた努力を怠らないようにしなければなりません。

 

 子供同士の遊びに怪我は付き物です。怪我をしたことを全て法律問題とすることは現実的ではありませんし、お互い様の面もありますので、できるだけ当人同士の話し合いで解決することが望ましいと思います。

 

度を越した遊びで怪我をすると法的責任が発生することも! 

 

 しかし、一方が重症を負ってしまったとか、加害者の攻撃が遊びの範疇を超える暴力的なものであったとか、ルールを無視した危険なものであった場合は、話しが変わってきます。

 質問者のケースが、いずれに属するかは分かりませんが、遊びの範疇として予想される範囲のことであれば法的な責任問題は発生しませんが、悪ふざけがエスカレートして一方的に怪我をさせてしまったとすれば法的な責任が発生することになります。

 

 実務的には、法的責任があるかないかにかかわらず、怪我をした児童は痛い思いをし、メンタルな面でも経済的な面でも負担が発生していますので、これを加害児童側が無視するわけにはいきません。

 相手の親御さんが心配しなくてもよいと言ってくれていても、これに甘えて気遣いに欠けると、相手に被害者意識がめばえ、感情的な不満から法的問題に発展することはいくらでもあります。

 加害児童側としては、そのような被害者側の気持ちに配慮しながら、定期的な見舞いと経済的負担の軽減に努めるべきでしょう。

 

日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度の利用を!

 

 質問者のケースは、放課後の校庭での遊びの最中の事故ですから、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度が利用できる可能性があります。同制度は、被害児童側に発生する損害の全てをカバーするわけではありませんが治療費と、顔面に残った傷跡が後遺障害と認定される場合の障害見舞金が一定程度支給されますので、これだけでも被害児童側の負担はかなり軽減されます。

 

 友達同士の遊びでの事故ですから、できるだけ話し合いで円満に解決することは以後の学校生活のためにも必要です。そのためにも、最低限の被害者への配慮は怠らないようにしたいものです。

 

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2015.06.10更新

Q.先月、小学生の娘が公園のブランコで遊んでいると、ブランコの留め金が外れて落下し、頭を打って救急車に運ばれました。幸い命には別状はありませんが、2週間入院し、母親の私も仕事を休んで病院に付き添いました。今後しばらく通院しますが、後遺障害も心配です。これらの費用について、公園を管理する市に対し、補償を求めることはできるのでしょうか。

 

A.公園管理者である市や県に対して国家賠償請求が可能!

 

 公園のブランコは、市が設置管理する公の営造物です。公園のブランコは市民が広く利用することが前提となっていますので高度の安全性が求められます。ブランコを通常の方法で使用している際にブランコの留め金が外れることはあってはならないことですから、ブランコの保守整備に問題があったとしか考えられません。

 

 したがって、ブランコを設置管理する市には国家賠償法の公の営造物の設置管理上の瑕疵に基づく損害賠償責任が発生します(国家賠償法2条1項)。
公園の設置管理について県が補助金を出しているなど、費用を負担している事情があるなら県もまた損害賠償責任を負います(国家賠償法3条1項)。

 

事故発生の経緯、状況、事故後の対応について記録に留める!

 

 お子さんは小学校ですので、治療費、交通費のほか、通院に親御さんが付き添ったことによる付添費、通院期間に応じた慰謝料、万が一後遺障害が残った場合の程度に応じた慰謝料、将来の逸失利益(後遺障害のために失った労働能力を補てんする損害)が請求の対象となります。

 

 事故発生の経緯、状況、事故後の対応などは、後で争いになることもありますし、ご自身に加入される傷害保険などの手続に必要となりますので、きちんと記録に留めておくとともに、念のために、警察には業務上過失傷害罪での被害届も提出しておくことをお勧めします。

 

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2015.06.07更新

Q.先日、小学校2年生の息子が友達と道路で遊んでいたとき、過って工事中の隣家のブロック塀にぶつかって塀が崩れ、足を骨折する怪我をしてしまいました。息子は友達の蹴ったサッカーボールを追いかけてブロック塀の傍に向かったところ、業者が道路脇に積み上げていたブロックに足を引っ掛けて塀にぶつかったそうです。息子の治療費は請求できるのでしょうか。できるとして誰に請求すればよいのでしょうか。

 

A.第一次的な責任は工事業者にある!

 

 事故の原因は、工事業者が道路にブロックを放置していたことと、子供がぶつかっただけで崩れたブロック塀の強度のなさにあります。

 道路は人や車が行き来する場所ですから、工事中とは言え、ブロック塀を放置していたことに工事業者の過失があることは明らかです。したがって、工事業者に対しては、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償を求めることが可能です。

 

 また、ブロックに足を引っ掛けて転倒しただけなら骨折という重傷には至らなかったと思われますので、ブロック塀の強度に問題があったことが怪我の原因と考えられます。

 工事の施工に問題があったとすれば、工事業者が危険なブロック塀を施工し、必要な事故防止策もとらずに放置していたことが事故の原因ですので、やはり工事業者は責任を免れません。

 

工事が終わった後なら家主に対して請求できることも! 

 

 ところで、事故発生時点の工事の進捗が未だ工事中であるなら、工事業者がブロック塀の管理について第一次的責任を負うと言えますが、工事も概ね終わり、発注者である隣家の家主に引き渡された後であるとすると、家主にブロック塀の管理占有が移ったとも評価できますので、その場合には、家主に対し、ブロック塀という土地工作物の占有者あるいは所有者としての損害賠償を求めていくことも考えられます。

 

 損害については、治療費だけでなく、未だ小学校2年生ですので、通院に親御さんが付き添ったことによる通院付添費、交通費、通院期間に応じた慰謝料、万が一後遺障害が残った場合には、後遺障害の程度に応じた慰謝料、将来の逸失利益(後遺障害のために失った労働能力を補てんする損害)も請求可能です。

 

損害算定にあたり、お子さんの過失が考慮されることがある! 

 

 なお、道路で遊んでブロック塀に足を引っかけたことについてお子さんに過失があると評価されないかが問題となります。
 確かに、遊びに夢中になっていて道路のブロックに注意が向かなかったお子さんにも事故発生の一端があったのかもしれません。しかし、足を引っ掛けて転倒して怪我をするだけなら骨折という重大事態には至らなかったでしょうし、ブロック塀の崩落と骨折という事故の本質的な面についてお子さんの過失を問題にするのは酷のように思います。
 仮に、お子さんの過失を認めざるをえないとしても、ブロック塀の崩落と骨折という損害全体からすると5~10%程度の評価に止まるでしょう。

 

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2015.06.04更新

Q.先日、隣家が火事となり、自宅の屋根の一部と壁が焼けてしまいました。また、消防車の放水により、隣家に面する部屋が水浸しになり、家財道具が台無しになりました。火災の原因は、漏電のようです。隣家は築年数が古く、配電設備に火花が散って火災となったようです。借家人の話しによると、以前にも漏電が原因と見られるボヤ騒ぎがあり、家主に改善を要求していたようですが家主が応じなかったようです。
 火災による損害の補償は請求できないと聞いたことがありますが、泣き寝入りするしかないのでしょうか。


A.漏電火災と隣家の損害賠償責任について

 

 火災の原因が家屋の老朽化による漏電であったということは、家屋の構造自体に欠陥があったともいえますので、質問者としては、家屋の瑕疵(通常有すべき安全性を欠く状態)を主張して、第一次的に家屋の占有者である借家人に対し、第二次的に家屋の所有者である大家に対し、延焼による損害の賠償を請求していくことを考えるべきでしょう

 

失火責任法とは

 

 失火による延焼被害は、木造家屋が多く、住宅が密集する日本の住宅事情を考慮した失火の責任に関する法律により、火元に重大な過失がなければ、損害賠償を請求できないことになっています。「重大な過失」とは、注意義務を著しく怠った場合、言い換えれば、わずかな注意を払っていれば被害の発生を防げたのにその注意すら怠った場合を言います。寝タバコ、ガスコンロやストーブの火の放置、ガソリン等の揮発性の高い物質を火の近くで取り扱う、などがこれにあたります。

 

 漏電は、不可避的あるいは偶発的に発生することも多いものですので、必ずしも重大な過失があるとは限りません。
 質問者のケースでは、家屋が老朽化し、過去に漏電による火災も発生したことがあるということですから、家主としては必要な修繕等を行うべきであったといえます。したがって、この点を捉えて、家主に重大な過失があったとして責任を追及することは考えられます。しかし、修繕を行わなかったことが常に重大な過失があったと認められるかというと疑問もあります。

 

土地の工作物責任を追及する余地がある

 

 他方、隣家は築年数が古く、配電設備に火花が散って火災となったということですので、見方を変えれば、家屋の維持管理に本来あるべき安全性が備わっていなかったとも言えます。

 

 このような土地の工作物の設置又は保存の欠陥が原因で他人に損害を与えた場合には、工作物である家屋の占有者が損害賠償責任を負うことになっています(民法717条)。占有者が十分な注意を尽くしていれば責任を免れますが、その場合、所有者が代わって責任を負うことになります。この所有者の責任は過失の有無を問いません。

 

 しかも、火災の場合、失火の責任に関する法律の適用もないとする先例がありますので、もし漏電による火災について、失火の責任に関する法律では責任を問えない場合でも、家屋の設置又は保存の欠陥を理由に損害賠償を求めていく余地があります。

 

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