2014.10.26更新

 こんにちは。港区虎ノ門の弁護士好川久治です。

 

 平成19年12月、当時91歳であった認知症の高齢者(男性)が、家族が目を離したすきに自宅を出て徘徊し、電車に轢かれて死亡するという事故がありました。この件をめぐり、JR東海が男性の家族に対し、事故でかかった振替輸送費や人件費等の損害賠償を求めた事件で、名古屋高裁は、平成26年4月24日、当時85歳であった男性の妻に対し、約360万円の損害賠償金の支払を命じました。1審の名古屋地裁は、男性の妻だけでなく、長男の責任も認め、約720万円の支払を命じましたが、控訴審では、離れて住む長男の責任は否定し、妻のみの責任を認めました。

 

 本件事件に限らず、車や人と列車との接触や衝突、飛び込みなど人身事故が発生すると、列車を運行する鉄道会社に多大な損害が発生します。例えば、代替交通機関から請求される振替輸送費、深夜の事故であれば乗客の宿泊代、事故の対応にあたる社員の人件費(超過勤務・休日出勤に係る各種手当や宿泊代など)、乗車券や特急券の払戻し・キャンセル料、怪我をした乗客への見舞金、脱線事故を起こした車両や線路、関連機器の修理費など広範囲に及びます。そして、その額は、数千万円から1億円に達することもあると言います。

 

 乗客や鉄道会社に生じた損害は、人身事故を起こした本人が生きていれば本人が、本人が亡くなっていれば遺族が賠償責任を負わなければなりません(民法709条)。また、本人が生きている場合でも、年少者や認知症等で責任能力がなければ、監督者である親や家族が責任を追及されることがあります(民法714条)。

 

 本件も認知症高齢者の徘徊が問題となった事件ですが、高齢化社会が確実に進展するなか、他人事では済まされない深刻な問題です。認知症の高齢者を介護する家族や介護業者などは、それはあんまりだ、というのが正直な気持ちでしょう。

 

 他方、鉄道会社にとっても、人や車と列車との接触事故、人身事故が跡を絶たず、社会的使命を負う鉄道会社とはいえ、その全てを自社のリスクとして抱えるには損害があまりにも大きすぎます。保険による対応はもちろん必要ですが、一企業に任せるだけでなく、社会全体が負担するリスクとして、国が総合的で有効な高齢者の徘徊対策を考えなければならない時期が来ています。そうでなければ、これからも悲劇は繰り返されるでしょう。

 

 

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あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
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