2015.04.25更新

もらい事故で損害賠償を命じられた判決(福井地裁)

 

平成27年4月13日の福井地裁の交通事故の判決が話題なっています。

 

 この事故は、平成24年4月30日の午前7時過ぎに福井県あわら市内の国道で起きた車両同士の正面衝突事故です。居眠りをした大学生が運転する車がセンターラインをオーバーし、対向車線を走ってきた車と正面衝突、助手席に乗っていた友人で、車の所有者でもある大学生が脳挫傷等で死亡したという事故です。

 

 この裁判で、死亡した友人の遺族が責任追及をしたのは、運転をしていた友人の大学生と対向車線を走ってきた車の所有者でした。

 この判決で注目すべきは、裁判所が、対向車線を走ってきて、いわば「もらい事故」に遭った車の所有者の責任を認めたことです。

 

 現場は、片側1車線の国道で追越しが禁止されていました。対向車線を走ってきて「もらい事故」に遭った車の所有者は、まさか自分が責任を問われることになるとは思わなかったでしょう。

 

 しかし、裁判所は、対向車側の運転手が、「どの時点でG車(センターラインをはみだした車)を発見することが可能であったかを証拠上認定することができない」ため、「過失があったと認めることはできない」とする一方、「実際よりも早い段階でG車(センターラインをはみ出した車)の動向を発見していれば、その時点で急制動の措置を講じてG車と衝突する以前にF車(自車)を完全に停車させることにより,少なくとも衝突による衝撃を減じたり,クラクションを鳴らすことにより衝突を回避したりすることができた可能性も否定できない」として、対向車側の運転手に過失がなかったとも言えないとしました。
 そして、過失があったともなかったとも判断がつかない以上、対向車側の車の所有者の責任を認めざるを得ない、としました。

 

判決は間違いなのか?

 

一見理不尽とも思えるこの判決ですが、実は法律を正確に適用した結果です。

 

 今回の判決は自動車損害賠償保障法(自賠法)3条を根拠にしています。

 自賠法は、自動車の有用性と危険性を考慮し、自動車の運行によって利益を得る者、危険な乗り物を保有する者に、重い注意義務を課しています。

 具体的には、自動車の所有者などの「運行供用者」が、自動車の運行によって他人の生命と身体を害した場合には、次の3点を自ら証明しない限り、責任を免れないとしています。

(1)自己及び運転者が注意を怠らなかったこと
(2)被害者又は運転者以外の第三者に故意や過失があったこと
(3)自動車に構造上の欠陥や機能上の障害がなかったこと

 つまり、この3点については、「運行供用者」の側に立証責任を課したわけです。

 

 今回の判決は、対向車線を走ってきた車の所有者が、(1)の証明を尽くせなかったために免責を認めませんでした。
 つまり、裁判所は、「運行供用者」側に過失があるともないとも判断がつかないので、立証責任のルールに従って、証明を尽くせなかった「運行供用者」側を敗訴させたのです。

 

控訴審では違った判決も

 

 もちろん、本当にどちらとも判断がつかなかったのか、それとも居眠り運転をした側の一方的過失であったのかは、事実認定の問題ですから、証拠やその評価の仕方によって異なった結論になることはあります。

 

 ですから、敗訴した対向車両の所有者側が控訴し、センターラインはみ出してきた車の存在に気づいた位置を特定したうえ、たとえその時点で直ちにブレーキを踏み、あるいはクラクションを鳴らしたとしても、衝突を回避することはできなかったことを証明できれば、第1審の判決が覆る可能性があります。

 

 ところで、この判決は、対向車線を走ってきた車側の過失を6割と認定しています。これを高いと見るか低いとみるかも判断が分かれるところだと思います。控訴された後の上級審の判決の内容を注目したと思います。

 

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あんしん相続相談ガイドに掲載されました。
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